わたしたち、健全なキョーダイです・・・よ?『キョーダイコンプレックス』1巻

キョーダイコンプレックス 1 (ヤングキングコミックス)

キョーダイコンプレックス 1 (ヤングキングコミックス)

  • 作者:9℃
  • 出版社:少年画報社
  • 発売日: 2018-08-17

童貞兄×恋愛経験豊富妹の群像系ホーム&ラブコメディ!

…と売り出すのはかなり危険な橋というか、じっさいこれでは詐欺にあたるのでは…ということでアマゾンレビューでもまぁブチ切れている人がいますが気持ちは十分わかります。わかった上で、個人的には好きな作品なのでこうして更新しています。

ブラコン・シスコンたちが複数登場する群像劇として描かれるのですが、恋愛対象として相手を見ているわけではない。つまりキャッチコピーとして言われている「ホーム&ラブコメディ」ですがホームコメディとラブコメディは完全に別…!!おいおい!妹が、兄が、姉が、弟が、恋愛対象じゃないなんておかしいだろ!!!という現実とは思えない日本語で怒りのツッコミをしてしまうことになってしまう…!!

個人的にもこの作品を買うにあたって、禁忌的な関係だったり緊迫感のある恋愛模様も見れるのではという期待から手を伸ばしたのも事実。

 

でもこれって作品の売り出し方が本質とズレてしまっているから起きてしまった悲劇なわけで、けっして作品として間違えているわけでもないし、描きたいこともきちんと伝わるんですよ。血の繋がりのある異性。人生のなかでも相当に長い時をともにする(ハメになる)相手との関係性だって、10組あれば10組ともがちがう。

キョーダイコンプ12

はぁ~かわいい。過保護なお姉ちゃんかわいすぎる・・・・・・
別に登場するすべてのきょうだいが別の相手とのフラグを立てていくわけではない。

十組十色の家族関係。
依存したり、過保護だったり、だれにも言えない気持ちを抱えていたり、案外ドライだったり。恋愛に限定しなくたって、ふたりの人間を結びつける感情はどれも皆オリジナルで同じものはない。家族愛、異性愛、共依存。いろんな感情が折り重なっているはずなのだ。

がッ……しかし…!一部の話だが……!!
これだけ兄妹仲を魅力的に描いておいて……!!
ラブコメの相手は別人ってそれアリか……!?

1巻読んでて終盤で妹ちゃんが部活の先輩の童貞メガネくんといい感じになったときビビり散らしましたけどね。兄に親しい女性ができた……その事に動揺に素直に祝福もできない妹……そこから畳み掛けられた別の感情!「毒が…裏返るッッ」烈海王かよ。NTRでもないのに勝手にそんな気持ちになって凹んじゃう全国のナイーブなお兄ちゃんたちが泣いてるぞ。

こうして読者が困惑したりかってに裏切られたような気になるのももしかしたら計算のうちかもしれませんけど、これは事前に知っておかないと人によっては怒りをいだきかねないミスリードなのでこの関係図を叩き込んでおくといい。(べつにすべての兄妹・姉弟がまったく別人に矢印が向いているワケでもないことも分かると思う)

キョーダイコンプ11

いや、俺はべつに真知ちゃんが和泉くんとくっつくのがイヤなんじゃない!そうじゃないんだ!ただ・・・でも・・・置いていかれるお兄ちゃんの気持ちも考えてって・・・そういうことだ!(情けなさすぎる)
そもそも経験豊富で重度なブラコンヒロインを攻略していく和泉くんをすげー応援したくなる。冴えないクソ童貞と小悪魔ギャルってカップリングとしてもたまらんすぎる。
大丈夫だ、この傷が癒えた先に、
激アツのラブコメ展開で俺はガッツポーズしてるハズなんだ・・・・・・!!

 

 

そういういろんな意味でこの作品をとても楽しんでいるんですけど公式側がリードをミスってるのでこういう書き方をしてしまいましたね。気分を害されましたらすみません。

複数のブラコン女、シスコン男が登場する群雄割拠の学校生活が描かれる本作。個人的に好きな一ノ宮兄妹のふたりですかね。ここは双子なので他とはまたちょっと状況が違う。彼らのシチュエーションはいちいちグッときますねえ、そもそも男女の双子ネタが好きなだけでもある。

キョーダイコンプ13

優等生でカタブツな兄と、奔放でいたずらな妹。噛み合っていないようでお互いにない部分を補い合ってる関係性がたまりませんねぇ。梨央は腹に一物かかえてそうな女ランキング1位。表面的に道化を演じてそうで、中身が信じられないくらい黒そうなので性癖にジャストミート。2巻ではもっと出てくれ~~~

そんなこんなの第一巻。キョーダイ同士のラブコメを過度に期待するとアレですが、キュートすぎる絵柄と時折ダークさが漏れ出てくる作風がハマる人はきっと多いハズ。最近いろんな雑誌で見返る注目の新人作家さんです。今後もチェックしていきたい。幸福も後悔も、いろんな表情を見せてほしいヒロインたち。

 

試し読み↓
http://comic.pixiv.net/works/4909

 

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君のいた春に灼かれて。『君だけが光』

君だけが光

君だけが光

  • 作者:シギサワカヤ
  • 出版社:白泉社
  • 発売日: 2018-07-31

シギサワカヤ先生のキャリアで初めてGLで統一された作品集。これは歓喜ですよ。個人的にシギサワ先生の作品で何が一番好きかって、作品集「誰にも言えない」に収録されたGL作品「エンディング」なんですよ。シギサワ先生ならではの悪質でリアルな感情描写に女同士ならでは苦しさ、”それでも”って繋がれていく感情が紡ぎ出すあまりにも美しく胸かきむしられる切ないエンディングに連れて行ってくれる。傑作オブ傑作。読んでくれ。

落ちてはいけない恋。きっと報われない。きっと祝福もない。けれど美しい。
そういうのをシギサワ先生は描き続けている。禁忌萌えの権化ですからね。落ちちゃいけない恋だからこそ、面白い。そういう意味で落ちちゃいけない恋なんてこの世にありはしない。

苦しみながらも縛られ続ける。人生ごと灼かれ続ける。触れあえば確かに心は安らぐのに。
本作は女同士だからこそ深く結びついた2つの物語を収録。濃密にシギサワ流百合を堪能できるってわけです。百合かどうかは個々の判断に委ねられるところはある・・・けど公式でGL作品集と言っているので問題なし!

そも、「君だけが光」ってタイトルがですね、すでにギンギンにキマりまくってるんです。君だけが。それはもう縋るように、はたまた諦めのように響く。日本語って楽しい。

 

『スプリングハズカム』シリーズ

通しタイトルがないのですがスプリングシリーズってことで。分かりやすい「こんなはずじゃなかった」ってお話です。人妻となる女性が旦那より式場スタッフの女性に惹かれてしまって、秘密の関係に陥っていく。なんならハネムーンも急遽欠席の旦那のかわりに連れて行っちゃう。ひそやかな関係は制限も多く、そのことに静かな喪失感に苛まれる瞬間はいくるもある。そんな関係も奥さんに子供ができたことをきっかけに瓦解してしまう。

君だけが光1

どうしようもなく、吸い込まれそうな魅惑がそこかしこに差し込まれる。思い悩む主人公にとってそれは完全なる誘惑で、しかし求めても手に入ることは絶対にないとお互いに分かりきっているのに。いや、だからこそ軽率に愚かに手を伸ばす。

堂々と祝えるような関係ではないから、2年10ヶ月という言葉遊びみたいなお祝いをするシーンがふたりの関係性を示していてお気に入り。そして祝われたほうがその真意に気づかないあたりも。届くことを願う一方的なコミュニケーションも祈りのようで、じわりと甘酸っぱいのだ・・・。

そこからの再生の過程は若干性急だったけれどそれは明らかに意図的に感じる。リアルな痛みが目の前にあったとき、途端に覚悟が決まるのがカッコいいよな。私しかいないって、ここで確信できたのだろう。あの楽園にいた頃では決断できなかったことをもっとずっと大人になってから選択することができた性急で切実なストーリー展開にも魅せられる。

なによりラストのふたりがとても幸せそうで、決断を後悔してなさそうな感じでとてもいい。同棲カップルとその子の交流という意味では羅川真里茂先生の「ニューヨーク・ニューヨーク」もとても上手だったけれど、本作もそれに近い価値観が込められていてとても好き。

 

『プレパラート』

前後編で構成された崩壊と再生のGL。いやぁ~~~好きなヤツだ~~~~~学生時代の感傷と失敗をいつまでも引きずり続ける情けない大人に 大人だ 大人になってしまったんだ

高校時代、互いにちょっとクラスから浮いてたふたり。息苦しくも退屈な学校生活で、ささいなきっかけとともに距離は縮まる。なんだか眩しくて羨ましくて、光り輝いているみたいな彼女。その光りに照らされるごとに自らの心に落ちた影は濃くなる・・・

あの娘の描いた絵を恨んだ。私よりも評価されて、私よりも自由で、私に足りないなにかを確かに手にしていて、こんなにも自分自身が惹かれてしまうあの絵を恨んだ。そして穏やかな青春はみじめに砕け散るのだ。自分のせいで。自分も相手も認めることができない、ちっぽけな自尊心の反発で。くだらない八つ当たりで。

・・・学生時代はこんな甘酸っぱく惨めな物語で後味悪く幕を閉じる。
そして再会し、蘇っていく傷跡。大人になってもっとお互いに傷だらけになって、それでもお互いに忘れることも許すことも許されることもできないまま生きてきた。生き延びてきた。その精算が行われていく再生譚。

生きてきた日々の長さが。重ねてきた苦しみの数が。あのころの眩しいばかりのふたりをまったく違う形に変貌させていた。けれどそれでもなお強烈に心惹かれてしまうのだ。彼女の恐ろしいまでの表現力。常人には至れない美しさと恐ろしさ。深く深く潜っていくその背中を見て、あの頃と同じように胸をかきむしられるのだ。

君だけが光2

彼女のようになりたかったのか。
憧れていたのか。
醜い嫉妬か。

ただただ彼女を保護して、彼女のやりたいようにやるのを後ろで見守りながら呆然と傷ついていく主人公の気持ちが、ここまで読みすすめてすっかりナイーブになった心臓にぐさぐさと刺さるのだ。暴力的な才能に圧倒され、やはり彼女こそは特別なんだと確かめる姿は、自傷行為のようだった。読んでてゾクゾクくるし、息が詰まってくる箇所。ズタボロになっても描き続ける女性と、それを見つめながら同じく傷つくもうひとりの女性。こんな不器用にしか繋がれない未来が、ひどく尊いのだ。ましてやここに来て、ようやく好きだって口にすることができたのだから。

ラストへの流れの美しさもさることながら、特筆すべきはエピローグの存在。
雑誌掲載時にはなかったコミックス描き下ろしのエピローグには、遠いとおい未来が描かれており、いっきに時代が進みすぎて心がついていけないところに強烈な言葉が次から次に放り込まれるヤバイ8ページ。タイトル「遠い光」の意味を理解し、置き去りにされたような喪失感と、読み終えて本を閉じたときにもういちど目に飛び込んでくるカバーイラストのあまりの美しさに死にかけるダブルパンチでK.O.

いや・・・この作品、シギサワカヤ作品でもかなり上位の完成度だぞ・・・!!

恋かどうかはわからない。それでも一生ずっと刻まれたままの青春の傷跡で、死ぬまで離れてなんかくれないのだ。でもそんな執着で人生を捧げてしまえば、それはもう恋でなくてもいい。彼女たちだけの関係で、ふたりだけの世界がそこにあったのだ。
言い換えれば、呪いとも言えるのだろうけど。

「灼く」って漢字は光るという意味もあるそうで、なんとなく本作を読んでいて浮かんだ漢字でした。身を苛む業火の炎。「スプリング」シリーズの作中でライトに触れて指を傷つける場面があったけれどまさにそれですよね。苦しみを生む光り。自分自身を照らしてくれる光りでもあった。今の自分も、この先の道さえを教えてくれるような、なくてはならない地獄の光。そんなのを与えてくれる存在、人生にふたりといない。

照らしだされて、ようやく自分のかたちを確かめるように。
君が、君だけが光るんだ。

 

 

 

 

短編にこの曲のタイトルが使われていたので。

消えたアイドルと消えた作家の共犯劇 『君はゴースト』

君はゴースト 1 (Feelコミックス FC SWING)

君はゴースト 1 (Feelコミックス FC SWING)

  • 作者:染谷みのる
  • 出版社:祥伝社
  • 発売日: 2017-10-07

 

君はゴースト 2 (フィールコミックスFCswing)

君はゴースト 2 (フィールコミックスFCswing)

  • 作者:染谷みのる
  • 出版社:祥伝社
  • 発売日: 2018-06-08

干されたはずのアイドルが数年ぶりに蘇った。復讐を目的に。
主人公の佐倉は作家としてデビューしたもののヒット作に恵まれず、ゴーストライターとして生計をたてる青年。そんな彼に突然妙な話が舞い込む。表舞台から姿を消したはずのアイドル・真咲遥の手記の代筆。そしてそれは、彼女が企てる復讐劇の片棒をかつぐことを意味する・・・

実際手にとって見ますとですね、めちゃくちゃに装丁がキレイなんですよ。特殊紙を使ったカバーと白を基調にした色合いに、ミステリアスなキャラクターの表情が際立つ。表紙買いです。
あと設定も素晴らしい。消えたアイドルを秘密に迫るミステリー風味から業界の闇を描くサスペンスに移っていく。扱っているテーマがなかなかダークなものではあるものの、ヒロインも主人公も清涼感のあるキャラクターなおかげでさっぱりと読めます。

全2巻。こういうボリュームの漫画がとても好きで、フィーヤンはいい短編の良作を生み出してきているんですよね。昔だけどエロエフとかもそういうイメージがある。
登場キャラクターも整理されていてよぶんな配役がない感じもスッキリ。

 

そしてヒロインがいいですね・・・!ファムファタル感ある。ファムファタルにしてはやや弱いのだけれど、それすらも人々を引きつける魅力になってるのがタチ悪い。

ゴースト1

ぜったいロクでもないでしょ。でもそういうのに巻き込まれる物語が好きなんです。裏切られてボロボロになって、そこから再起して表舞台に戻ってきた。殺意にも似た決意を握りしめて。ドラマチックな女性だよなぁ。

個人的にはヒロインにしろ主人公にしろ、もっと激しい感情を燃やしていてほしかったとも思う。テーマが復讐でそこはきっちりと完遂したのだけれど、もっと人生を狂わされていてほしかった。主人公はもっとコンプレックスを持っていてほしかったしヒロインにはもっと女という生き物を拗らせていてほしかった。設定からして性癖的にめちゃくちゃ好みだったけれど、想像を上回るなにかが少し欠けていて、おとなしすぎたような感じ。

もっともそんな暗い方向に突き進んでいたら、本作のラストシーンのような爽やかな春の日を迎えられたかというと非常に疑問なので、ようは自分が悪い。ライバルキャラだった茜ちゃんがもっと掘り下げられていればさらに嬉しかった。のし上がるために多くのものを犠牲にしてきただろうから。

ダークな部分は控えめだったけれど情緒的なムードは抜群で、不安定な人生のなかに触れ合えるぬくもりの歓びが感じられる祝福感と、あと引くどこか甘酸っぱい喪失感。終わり方がオシャレな漫画はこうかばつぐんなんだよな。そういえば主人公は佐倉だし、ヒロインは真咲だし、どちらも見事にラストシーンを意識して名付けられていてニヤリとさせられる。

 

 

気持ちいい作品でしたね。業界モノとしてのディープさを求めるものでないけれど、ふたりを繋ぐストーリーはとても誠実で、本質で惹かれ合っているという感じがある。

でも度々言うけれど、ラストシーンがとてもいい。恋とはまた完全に別物として”憧れ”が描かれる。目には見えるが触れられない。そんな幽霊のような憧れの感情。恋人になってもなお解けない魔法のような、異性としてではなく存在として尊ぶような、畏れとも信仰とも近いような。そういう複雑怪奇でオリジナルな誰かを見つけたときの感情のひとかけらが変質して恋だの愛だのになるのかもしれない。本物に届かなくたって君の幽霊を追い続ける人生。

 

そしてサブタイトルで気付かされる。あなたもわたしも幽霊。あなたにとって。わたしにとって。お互いが憧れ合う、ふたりの関係性がささやかに鮮やかにしめされる。いい落とし方だ。ストーリーと装丁が完全にシンクロしている。本として愛情を感じられる漫画です。

 

 

君はゴースト2

ぼくらの空洞が響鳴する。『月曜日の友達』

4091896219 月曜日の友達 1 (ビッグコミックス)
阿部 共実
小学館 2017-08-30by G-Tools
4091898009 月曜日の友達 2 (ビッグコミックス)
阿部 共実
小学館 2018-02-23by G-Tools

月曜日の友達2巻を読みました。

雑誌でも読んでましたが単行本として読むと、作品としての完成度の高さにあらためて腰を抜かす。

しかし完成度の高さを語りたいのではなく。いやもちろん高いんだけれども。

なにがすごいかって、こんなに色んな人が絶賛している中でも『これは自分だけの物語だ』と信じられてしまいそうな、魂に染み込むほどの共鳴があるということだ。共感。シンパシー。「俺が1番この作品をわかる」とイタいことまで考えてしまう。20代も半ばとなった自分にしてこんなにも入れ込むのだからドストライクの思春期にこんな作品にブチあたっていたらと思うと恐怖すらある。惜しい。もっともっと心の柔らかなときに触れたかった。そしたらもっとエグられていたはずだ、畜生。十分すぎるほどに打ちのめされた作品だけど、そんな想いさえ湧き上がってくる。

むかーし10代の頃、「フリクリは20歳になるまでに観ろ」と助言をもらったことに今でも感謝しているけれど、俺はこの作品についても同じようなことを思う。むしろ阿部共実作品を10代で読んでいてほしいし、阿部共実作品の中でも比較的、入門として手に取りやすい作品だと思う。

別にわかりやすいトラウマ漫画ってわけではない。それならもっと、この作者の過去作に救いようのないドギツい作品だってかなりあるわけだし。阿部共実先生というストーリーテラーからすると、この作品はかなりシンプルな部類だと思う。

まぁひとまず第一話を読んでみてほしい。
http://yawaspi.com/tomodachi/

削ぎ落とされたモノトーンの世界。そこに息づく登場人物たちの、チクリと心臓を刺す心の痛み。身に覚えがある。そしてたぶん多くの人も通過した地点だと信じたい。この劣等感。疎外感。満ち足りない、なにか。夏休みをあけたら急にみんな大人びて見える恐怖。ふと気づけば自分だけ成長がない。進歩がない。一緒のペースで生きることができてない。1年間も同じクラスに同い年の数十人が押し込まれているのだ。いくらでも比較対象がいてしまうその環境で、たったひとつの傷も負わずに生き残ることができる人間が果たしてどれほどいるのか。

月曜日の友達2

私はどう生きたいのだろう。どうすれば大人になれるのだろう。でもどうか君だけは大人にならないで。私を置いていかないで。

とにかく心理描写と、それを突きつける言葉の切れ味がすごすぎる。
表現や描写におけるチャレンジが、個性的かつリアルな思春期の物語に完全に寄り添ってる。描かれる歓びやかなしみのひとつひとつを、感じたことのない熱量でこちらに投げかけてくる。恐ろしい漫画だ……。

主人公である少女・水谷も、それから月曜日の夜に約束を交わす少年・月野も。
この作品に登場する中学生たちは本当に生身の中学生のままそこにいる。
寂しさも悲しみも、それを分かち合える唯一無二の友達と出会えた歓びも、彼らは清らかな心のままに感じ取っていく。そしてときに打ちひしがれ、なぜだか素直になれず、後悔の連鎖を積み上げて、いくつかの夜を震えながら過ごす。掛け替えのないものと知りながら乱暴に触れてしまいたくなる。みじめな自分を見つけるたびに、誰かに会いたくなる。こんなに美しいまま、人間らしいままでいる季節がほかにあるか。中学生は最高だ。

(14ソウル。この漫画の彼らは12歳から13歳にかけてだけど)

 

水谷の疎外感も、月野の孤独も、なにかしら自分にフィードバックされるリアルな痛みがあって正直こたえる。コミックの紙になんかヤバイ薬品でも染み込んでるんじゃないかと疑うレベルで精神を揺さぶってくる。否が応にも息苦しくなって、そのたびの彼らが愛おしくて仕方なくなるのだ。

滔々とした語り口の水谷のモノローグはひとつひとつにその時の彼女の切なさが見事に表現されてて全部覚えたくなるくらいだし。やはり絵も力強くて印象的なコマがとても多い。バキッとコントラストの効いた画面づくりがひたすらにカッコよく、そこに載せられる言葉も温度感さまざまに心臓を圧迫してくる。そして思っていた以上のスピードで過ぎ去っていく日々と季節に焦りと甘酸っぱさを覚える・・・・・・。
好きなところだらけ。好きな所しかない。ラストシーンはもう「耳をすませば」並の胸キュンセリフが飛び出したりもする。小難しいことばっかり考えいた彼らの心が、互いのすぐそばまで1番近づいた瞬間。そこに発せられる言葉の、あまりの真っ直ぐさでもう泣けてしまうよ。こんな素直な言葉で気持ちを伝えあえてしまう夜。きっと一生ものに違いない。
作中の根本にあるどこか冷静なままの視線や乾いた感覚に支配されたまま読み進めた読者も、展開通りに空中にうちあげられて剥き身のままに彼らの約束や、ささやかな願いの清らかさにすっかり撃ち抜かれているのだ。


この作品を決定的に魅力的にしているのは「音」だと思う。

漫画表現で当たり前につかわれるオノマトペを排除している。クッキリとしたモノトーン調で描かれる世界の異物感が、音のない世界にやけに合っているんだよな。漫画としても独特のテンポが生まれて作品の味みたいなものになってる。

そんな無音の空間に響く言葉たち。キャラクターの台詞や、水谷の印象的なモノローグ。ひどく静かな洞窟の中、雫が1つ水面に落ちただけの音も聞こえてくるような、シンと耳をすませたくなる漫画なのだ。言葉に重きをおいた作品だからこその演出とも感じられる。漫画の中の風景に、自分が過ごした風景の音を重ね合わてしまうと没入感が増すのかもしれない。

月曜日の友達1

そして「音」でつなげてしまうなら。

みじめで満ち足りない、出来損ないのぼくらや彼らの中にはぽっかりと空白がある。空洞がある。日々の生きづらさが募るほどに空洞はどんどんと深さを増していく。
自らの中に空いてしまったそこに彼らは閉じ込められ、ただただ自己嫌悪ばかりが反響し、心をくじけさせていく。音のない牢獄。からっぽなだけの自分だ。

しかしだからこそ、なにか小さな一欠片がそこに投げ込まれたとき。
例えば同じ寂しさを共有する人に出会えたとき。
そして誰かの特別になれてしまうような、途方もない奇跡があったなら。

その空洞は共鳴し反響し、大きな音を奏でるのかもしれない。となりの誰かの空洞と、響き合える瞬間があるのかもしれない。価値観全部を変えられるような。寂しさや悲しみ全部を塗り替えられるような。まるで魔法のように。

それこそが、音のない世界でたしかに響く、欠けた彼らにしか聞こえない音。
彼らにしか使えない、秘密の魔法だ。

 

 

 

そんな魔法を手に入れた夜が一生モノの輝きを放つラストシーン。
惨めでも欠けていても立派でなくても、自分が空っぽだと思いこんでいても、自分を認めることなんて出来なくても、それでも誰かの特別になりたいと願う心はどんなに美しいか。
こんなに熱いものを見せられてしまったら、この月曜日の夜に魂ごと吸い込まれて、しばらく戻ってこれそうにない。

 

 

amazarashiが歌うこのイメージソングも完璧だ。ここまで読んで、こいつなに言ってんだか訳わかんねぇなってなった人もこれだけ見て帰ってくれよな。

 

 

 

光の行方はその彼方 『恋は光』6巻

 

恋は光 7 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) 恋は光 7 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
秋★枝集英社 2017-11-17
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恋は光、その最終巻。ようやく決心ついて読み終えた。
というのも俺と同じキャラクタを応援してた人が発売直後にショックを受けているようなツイートをしているのを目撃してしまい、読む前からテンションが落ちてしまうマヌケな事態に。
とは言えいつまでも積読わけも行かず、勝手に失恋したような気分もようやく抜けたこの頃、ようやく読み終えた次第。

なぜ秋★枝先生を信じることが出来なかったのか?という反省しかない。

良い、漫画だったな。
なにを恐れていたのか。北代という素晴らしい女の子の晴れ舞台を恐れて逃げた自分が恥ずかしくて嫌になりますよ。
こんなにもまっすぐに「恋とはなんだろう」という問いを見つめ、慎重に言葉を探し続けた本作だからこそ、たどり着けた境地に感じる。恋愛漫画において非常に綱渡りな結論を出したとしても、なんかこう、腑に落ちる感覚があるというか。
展開を台本として読んていたならきっと不満があったろうけれど
きちんと本心からの言葉で登場人物たちが想いを吐露していく。
切ないシーンも続きますが、ドンヨリと暗くなりすぎない絶妙な暖かみもある。

北代ちゃんをどうして応援していたかを自分なりに分析してみると浅はかなもんで

・長年の片思いが報われてほしい
・主人公とフラットに付き合ってきたので未来がイメージしやすくて安心
・女房感

というね、ある種同情のような、というか「報われてほしい!!!!」ってのが八割ですよ。でも確かにこれ見直してみると、恋愛対象というより・・・保護対象的な・・・。

6巻で暴走告白しちゃったときは、普通の漫画だったら負けフラグかなと思いましたけれども作者の秋★枝さんは結構以外な展開も放り込んでくる人なので、もしかしたら、と。
結果はまぁご覧の通りでしたが、フラれ方がお見事。負けの美学というほどカッコよくはない。けれど二人の歩んできた時間の、その重さを、その価値を、お互いがどれだけ大切に思っているかがしっかりと伝わる。酒で飲み下した苦い感情。

本当に、美しい恋をしてきたんだ。
震える子犬をそっと毛布で包んであげるような。
恋愛とも母性とも依存とも取れるような、穏やかで清らかで、閉じた恋を。

けれど西条は恋とは受け取らず、そこが自分の居場所であると、家族からの無償の愛のように受け取ってしまった。
男女の関係とは程遠い、清潔でオリジナルな関係だった。それはとても得難く、作中でも言われていたように「特別すぎた」。虚しくもなるわ。でも西条はクズい一面もあるがこと結論を出す場面に置いては紳士的だし、本当にその女性との関係ついて思考に思考を重ねたような、熟慮の後が見える台詞回しも好感度が高い。そして北代ちゃんが西条の言葉に、彼女がこれまで過ごした時間が報われたかのような、切ないカタルシスを覚えたのが印象的でしたね。

「ずっと一緒に居たのにそれをフッちゃえる人なんだ」という不満を言う宿木に対して、一緒にいる、ただそれだけしかしなかったと振り返る北城ちゃんの
ちょっと困ったようないつもどおりの下がり眉の表情が、グッと来ますよ。

彼と彼女の関係は絶対に間違ってはいなかったし掛け替えのないものだけど
けれどずっと二人で生きていくには、最初から近すぎたのかもしれない。

北代ちゃんが好きなだけで別に他のキャラが憎いんではなく
東雲嬢も宿木さんも、この全42話の連載の中でどんどん輝きを増していって大好きでした。ギリギリのバランスで成り立っていた3人の関係が、「恋ってなんだろう?」ってこっ恥ずかしいことをそれぞれを観点と感覚と温度で語りだすのが心地よかった。
お酒で大失敗する7巻の東雲さんなんかは、こういっては本人に可愛そうだけれど、あれがあったからこそ「美しい恋をすることができない自分」を自分のキャパ以上に認めざるを得なくなって、人としての魅力も上がったように思う。カッコわるい自分にクヨクヨ悩んじゃうなんてこと、マイペースに生きてきた彼女にはなかなかない体験だったろうから。そして作中で言われていたとおり恋愛なんてひとりでやるもんじゃなく、ペースを乱されて当たり前なのだから、そういう意味で東雲さんはひとりの女性としての変化が著しく魅力的で、ただしく正ヒロインだったのだな。

改めて最終巻を表紙を見て、思わず泣けてしまう。
作者の祈りのような、みんなのやさしさが手向けられているような。3人が揃って仲良く、そして光を放つ。
もちろんそれはすでに失われてしまった光景かもしれない。けれど
砕け散ったラストのその先にある未来だとしたら、あまりにも暖かいワンシーンだ。
光はだれに灯るのだろう。どこへ行くのだろう。恋とはどんなものだろう。
その光を見ることは出来ても、その思いの行方までは誰にもわかるはずがない。

 

本能でする恋と、学習でする恋。
このふたつの違いをじっくり腰据えて語るという切り口の面白さもあるし、尺も全7巻。ドラマにするとかに丁度いい尺なのでは??

完結巻をよむのにだいぶ経ってしましたが、間違いなくオススメできる作品。
「煩悩寺」もそうだけれど、日常の中でゆっくりと時が経ちそこで感情が高まっていく静かな盛り上がりを形作るのが本当にうまい。そして大変にツボなのです。

草壁さん

http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF01200215010000_68/

もう新連載も始まってましてこれもまーーーーー最高な気配がしますよ。
たいへんえっちです。おっぱい。オススメですね。

[漫画]”孤悲”満ちる、切なく静かな雨宿り。『言の葉の庭』 漫画版

言の葉の庭 (アフタヌーンKC) 言の葉の庭 (アフタヌーンKC)
(2013/11/22)
本橋 翠

商品詳細を見る

   どうしてこんなに 雨を待ってしまうんだろう――――・・・
「”愛”よりも昔、”孤悲(こい)”のものがたり。」
そんなキャッチフレーズが結末を知った後だと一層味わい深い、雨の日に逢瀬を重ねる男女のラブストーリー。「秒速5センチメートル」等で有名な新海誠監督が今年公開したアニメ映画「言の葉の庭」の、コミック版がこの作品です。
原作のいいところをうまく引き出してくれている内容でした!オススメしたい。
アフタヌーンで連載された新海誠コミカライズものはどれも出来がいいのです。「ほしのこえ」といい「秒速5センチメートル」といい。……ん?雲のむこう……?再開は難しいのかなぁ。
ともかく今回も満足のいく出来です。アニメを見た人にはもちろん、原作を知らなくても、この雨降る楽園の物語にしっとりと浸り、心震わすことができるのではないでしょうか。一冊で終わるので読みやすいですよ。
作画を担当したのは本橋翠さん。
調べればわかりますが別名義でも活動している方です。自分ももともとはその別名義の方を読んでいました。
別名義での単行本「よわよわ」は儚げなセンチメンタルと痺れるようなエロスが両立したお気入りの一冊でございました。うむ。
そんなワケで好きな作品×好きな作家さんという完全俺得コミカライズだもあったわけで。
最高じゃないか。
原作アニメ感想が↓です。
最高級の、雨ふる楽園の物語。『言の葉の庭』感想
それでこのコミック版感想は、原作を踏まえて書いています。
原作と漫画を比較してどうこうって書き方が多くなっていますので原作未視聴の方はご了承ください。まぁ見てない人は↓のPVだけでも見てくださいね。どうぞ(押し付け)


漫画の内容の大体は原作アニメ通り。かなり忠実な出来で嬉しいです。
その中でこのコミック版の見どころは、効果的なオリジナルシーンの追加です。
この漫画を読んだあとまた原作アニメをBDで見返しましたが(もう十何回目になると思う)、この追加要素がかなり良い…!!
「なるほど上手い」と思ったり、思わずニヤけてしまうような甘い場面も加えられてされており、新しい2人が見ることが出来ました。
言の葉1
たとえばこの場面。自分の夢を語るタカオに、雪野さんが突き放したような一言を発します。
原作だとタカオが夢を語った所で場面が切り替わったので、その後こういうやりとりがされていたという解釈でいいのでしょう。漫画版オリジナル要素としてここがとてもお気に入りです。
一見すると突き離すような雪野さんの冷たい言葉と視線。
けれどそこには、真剣に少年に向き合っている大人としての姿がある。無責任な「へぇ、すごいね、きっとなれるよ」なんて安っぽい言葉よりもっとずっと重たく、少年を夢に向きあわせました。
「こんな言葉程度で折れてちゃだめだよ」というメッセージを感じる、ある種の試練のような、裏返しの愛情に見えます。
この場面に関しては原作よりむしろこの漫画版が好みだったのかもしれない。
「大人」としての雪野さんの役割って、結構この作品の中では少なかったと思うんですよね。少年にとっての神秘というシンボルの存在。だからそこから一歩踏み込んで、雪野さん自身の意思で大人の女性のすごみを見せてくれたのが痺れるんだなぁ…!
タカオは少しずつ少しずつ雪野さんに惹かれていきますが
恋慕の決定打となった瞬間があるとすれば、それはこの場面なのかもしれません。
原作から一層、心の奥深いところでの交流がなされたのだ、という実感が湧く、いいオリジナルシーンだったと思います。
他にも細かなオリジナル要素があるのですが……
やっぱりね!雪野さんはとってもかわいいね!!な描写が多くて満足ですよ!
この作品の魅力のだいぶ大きい割合を占めているのは雪野さんという本作のヒロインなわけですが、漫画版は雪野さんの追加描写が目立ちます。
上のちょっとこわい雪野さんもこれに含みますが、これだけではない。
年下の男の子にときめいちゃってるお姉さんの赤裸々な内面に触れることができて興奮するのだ。
言の葉2
原作ではここまで雪野さんの心の声を聞くことは出来ませんでした。嬉しいです。
このシーンは雪野さんが足のサイズを測定されたことを受けての恥じらい。
あの時、雪野さんも平常心じゃいられなかったという事に、恋する女性らしさが見えます。朱に染まった横顔がかわいいですわあ…!!
測定シーンもアニメと同様の美しさ、妖しさ、緊張と興奮と静寂が感じられて良かったなぁ……。
それにしても漫画版の雪野さんも、滅茶苦茶かわいくてかわいくて…!
オロジナル要素とはまた別に、漫画版の魅力はこういう所でもあります。
原作よりちと幼く見えるのは書き手の違いというものですが、漫画の雪野さんは表情豊かで見ているこっちも幸せになってきますよ!
ひとりぼっちの時の安らかな、しかしどこか寂しげな表情も心が潤う。
一方でタカオと一緒にいるときの、感情があっちったりこっちいったりする、人間味のある雪野さんもまた素晴らしい。
言の葉3
言の葉4
とくにこのカラーページはクライマックスの場面であり、印象的。
カラーで見たい表情をカラーで描いてくれるのはニクいなぁ…!!


そしてラストシーンは原作のアニメの、ちょっと先を見せてくれる。
これはイメージソング「言ノ葉」のMVにもあった場面ですね。
映画本編では描かれてなかったので、初めて見る人も多かったのでは。
このMVはオリジナルカットも多数あるファン必見の内容なのですよ。
隠された聖なるエンディング-『言の葉の庭』イメージソングMVについて
幸せな締めくくりだ、と心から思います。
つよがりのようにタカオへの残酷な優しさのように、作中では雪野さんは「靴がなくても進む練習をしていた」と言います。
「靴がなくても」はタカオを遠ざける方便であり、雪野さんのつよがりと願いのようなものだよな。あなたがいなくなっても生きていけるように。心配しなくても大丈夫だよと云うように。
でも靴がなければ人は上手く歩けません。
裸足で歩めば、すぐにケガをして、痛くて歩けなくなるでしょう。
だからこそこのラストシーンは、これこそ雪野さんのストーリーを締めくくりだ、って思います。タカオにとってもきっと。だってタカオにとっての夢は、彼女のあの姿に結晶しているのだから。
映画本編ではこのシーンを見せない、その後を視聴者に祈らせることで余韻を生んでいました。しかし実際に目にすることで爽快感があることは間違いないですね。
それでも切ない余韻を残していくことも同じく間違いないんですがw
そしてコミックス描きおろし「おしえてユキノ先生」!!
幸せそうな雪野さんの和やかな表情に癒やされつつ、オチでニヤニヤするw
あとがきページでは12という歳の差を利用して、8歳のタカオと20歳の雪野さんという組み合わせのイラスト。
冷静に考えると12歳差はこれだけ大きいんんだよなぁ。
それと気になったのが雪野さんの名前。
原作では「百香里」ですがこの漫画版では「由香里」となっています。
意図的なものだとすると、原作と漫画では雪野さんのキャラクターが少し違う、という可能性を表しているのかもしれませんね。
「言ノ葉」MVのラストシーンはイメージや空想の映像なのかも?とも思える演出でした。しかしこの漫画版ではズバリそのものを描き出しました。
『約束を果たしたのかどうか』
つまりクライマックスについての解釈の違いが原作と漫画版には存在しており、それを示しているのでは?…なんて妄想。


以上。原作映画をふまえての漫画版の感想でした。
原作が本当に大ッ好きなので、もっとこの漫画の話をせいやと思われたらすいません。
濃密に叙情的なムードが一冊に詰め込まれていて、作画の本橋翠さんと原作の良さが共鳴したような出来栄え。本橋さんの絵もまた可愛いんだコレが。
新海作品は描写がサッサッと流れていく部分が結構あり、こういう形で小説なり漫画なり別のメディアで表現されることで噛み砕きやすくなるのかもしれません。ただでさえ美しい背景の情報量がとんでもないし。
BD再生機を起動しなくても手軽に言の葉の庭の世界観にひたれる。個人的にありがたい一冊です。加えて原作を知らずとも楽しめる、雨が好きになるラブストーリーとしてオススメしたい。
そんなわけでアフタヌーン×新海誠監督作品のタッグに外れなしという個人的なジンクス?が強まりました。
美しい時間と、雨にぬれる緑の匂いと、切ない心模様。
ああ、やっぱりいいなぁ新海誠作品。漫画版も、ぜひ手にとっていただきたい。
『言の葉の庭』漫画版 ・・・・・・・・・・★★★★
オリジナルシーンも追加されているし、出来もいいし、満足の行く一冊でした。
雪野さんの女性らしい表情がそれぞれとても魅力的なので、それ目的でもどうぞ。

[漫画]ひとりのオタクのひとつの終着点。『げんしけん』14巻(二代目の伍)

げんしけん 二代目の伍(14) (げんしけん (14)) げんしけん 二代目の伍(14) (げんしけん (14))
(2013/06/21)
木尾 士目

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   ……… 本当に…… 本当に楽しかったんだ
斑目ェ…………!!!
「げんしけん」14巻、二代目としては5巻が発売されました。
二代目になってのコミックス表紙は、女子がメインとなったサークルを象徴するかのように、女の子たちの賑やかなひと時が描かれてきました。しかし今回は一転、青色基調の斑目ソロ。ひとり部室に佇む彼の姿に哀愁を感じますわ…。この静かさが胸に染みる。
内容の方も「斑目のための巻」と言って差し支えない。
個人的にこの14巻収録の第80話を読んで、ひとつの世代がここで終わったように感じました。それだけ重要な、初代も含めても歴代最高レベルのイベントだった。
そもそも前回の13巻の引きが凄まじく、ここで次の巻まで待たせるのかよ!ってもどかしさMAX展開でしたよ。買っててよかったアフタヌーン。
以下、ネタバレには注意をしてくださいまし。
前巻→ついに運命が動き出す!初代メンバー集合の学園祭!『げんしけん』13巻(二代目の四)


それにしてももう14巻。二代目としては5冊目ですか。早く感じるなぁ。
初代は全9巻。ニ代目がどれほど続くかはわかりませんが、初代と照らしあわせてももう折り返し地点まで来てるんですね。
そんな14巻は、全体的に恋愛色が強い内容になっている気がする一冊です。
なんといっても、14巻どあたまの第81話が、すごい。
「いい最終回だった(告白Ⅱ)」とサブタイトルが付けられており、9巻の53話「告白」の続編に位置づけられているのが憎い演出。
「斑目に告白させよう」という恵子の策略により、咲ちゃんと部室に2人きりにさせられた斑目!
何年も胸の内で燻らせてきた片思いを今こそ吐き出すとき。
げんしけん144
「君はハナゲが出ていたんだ」
もう無茶苦茶なセリフだ。けれどずっと胸にしまっていたこの言葉を言ったことが、斑目にとっては致命的な意味を持っているよなぁ。
53話では「この事は墓まで持っていくのだ」とか言ってたし、告白しようにも直前に思いとどまって感情を爆発させられなかった。その臆病さ、ヘタレっぷりが斑目の愛おしさ。
でもあの時、咲ちゃんの卒業を間近に控えたあの時。言えなかった言葉を、やっと斑目は口にする。
ここらへんは本当に14話、53話のか延長戦のような描かれ方をしているので、このエピソードを読み終えて過去のエピソードを読み返したら、感慨深さ一層増しましである…。
でも…でもなぁ…。
くうううぅ~~~~~~……
いねぇ~~~~~……
絶対いねぇ~~~~~~~
『「君はあの時ハナゲが出てたんだ!!!!」って愛の告白する男』……

斑目さんが完全に3巻44Pのブーメランを食らってるように感じて、切ないやらおかしいやらでいろんな感情でいっぱいですよ!!
「咲は斑目の好意に気づいているんだろうか?」というのは初代ラストの余韻のなかで提示された、もっともな疑問でした。今回でそれの回答が得られましたが、「まぁ、ですよね~~」という感じですよねw
「・・・絶対私からは話を振らないつもりだったのに 本当ヘタレだね斑目は」
のセリフに、流石だなぁと思わされる。オタク嫌いだった初期から考えれば本当に彼女も変わったなぁとも思う。この告白への咲ちゃんの対応は誠実さがにじみ出ていていいなぁ。告白されたほうが泣いちゃうんだもの。
斑目のモノローグ「うん 知ってるよ 春日部さんは 意外とよく泣く」には、彼女を見つめた斑目の万感の思いが詰まっていて、本当に涙腺が緩む。
これまでの思い出とふたりの気持ちが交差して、素晴らしい名シーンでした。
それにしてもヒドいのはこの時の雑誌連載時の煽り文ですよ!
げんしけん15
「斑に咲く花」ってオイ!「Spotted Flower」!
楽園でやってるあの漫画のタイトルじゃないですか!
斑目と咲ちゃんのIFを思わせる幸せ夫婦漫画のタイトルをここで匂わせる。あんな風景はもう「げんしけん」世界では有り得ないと見せつけた後でコレですよ!
いつもは基本パロネタの煽り文なのですが、この時だけこんなネタを仕込んできたので印象的でした。
「Spotted Flower」は設定からしてげんしけんファンを惑わす代物で、あまりこれに踊らされちゃいかんと思い読んでいましたが、やっと気持ちの整理がついたような感じです。もともとこんなのIF以外ありえないだろーと思ってはいましたが…!


この文化祭の一連の流れには、笹原妹の恵子が大きな役割を果たしました。
前々から斑目を気にする様子を見せている恵子ですが
今回も様々な場面で斑目の心にちかづこうとしているように見える。
特にこの場面は斑目の核心に触れる部分で、彼を繊細に扱うよりある程度強引に立ち上がらせようとする恵子の気持ちが感じられてほっこりする。
げんしけん141
恵子、すげー大人になってんなー。人生経験か。斑目の破滅的なロマンティシズムを見ぬいて、そこにフォローを入れようとしている。やっぱり結構マジなんじゃないか。
単行本のオマケ漫画では、斑目の受けを考えてかいつもより大人しいナチュラルメイクで大学に来ていると指摘。おっおっドキドキしてくるな…。
咲ちゃんが最後に言った「頑張れば本当にハーレム作れるかもよ?」は現実味がなくてどう捉えればいいのか困るものではある。それくらいの可能性がいまのあんたにはあるよっていう励ましでもあると思うんだけど。
確かに今の斑目を取り巻くヒロインたち(♂含む)の布陣は凄いことになっていて、斑目さんのモテキを確信するしかない状態ですよ。
スーも斑目と顔合わせるたびに真っ赤になっちゃうし、波戸くんも完全に乙女みたいなことになってるし。
げんしけん143
波戸くん目覚めすぎい!
斑目さんと部室でふたりきりになったら発情しちゃうしなー。そろそろ本当に抑えが効かなくなってくるんじゃなかろうか。
「妄想と現実は全くの別」とキリッ顔で言うようなセリフが出ましたが、こんなの完璧にフラグじゃないですか。波戸くんの明日はどっちだ。


文化祭が一段落つくと、どうみても某アダルトグッズな代物が部室に落ちていて女の子たちが混乱するコメディ回に続き、賑やかな内容に移ります。
波戸くんにプレゼントをもらったのと、あのアダルトグッズを所持しているのはもしかして…?といういろんな羞恥心がごっちゃになって顔真っ赤になっちゃう矢島ー!!
将来への不安から迷走してエロいコスROM作ろうとする大野さん―!!
そして斑目さんは会社をー!!…っておいおい。斑目ェ…。
思えば二代目がスタートする前、「くじびきアンバランス」のおまけ漫画に、げんしけん初代のアフターエピソードがちょこっと描かれたことがありました。
そこで描かれていた出来事は今回で回収されましたね。
いよいよ、ここからが本当に先の見えない領域。
っていうか最近の大野さんのおっぱいはスゴいことになってる気がする。もともと巨乳キャラだけどここまでだったか…?もしやまた大きくなってるのか…?
採寸してるときの田中に殺意を抱いたことは当然である。
田中といえば今回の巻末描きおろしもヒドかったw
自分の彼女がいかにエロいかを滔々としゃべるという、まさに「もげろ」と言うに相応しい行い。
げんしけん142
とはいえこのオマケ漫画、斑目・久我山・田中の動機3人で野郎飲み、という実に微笑ましいワンシーンです。
卒業した今だから言える、かもしれない男同士の猥談が楽しい。しょーもねーなーってつくづく思える。でもこういう話をオープンで出来るのは面白いな。知人の誰彼をオカズに使ったわ、とかその行為自体なんか辛いし、しかもそれを友達に話せるというのがなんか別次元な感覚する。そこらへんの感覚は斑目のものに近い。でもそういう話を他人から聞くのは楽しいというw
この男同士のゆる~い関係が、げんしけんに憧れたひとつの理由でもあって、このオマケ漫画はすごくうれしい気持ちになる光景でした。


「げんしけん」14巻はまさにターニングポイントとなる一冊でした。
まず斑目の恋の決着がツイたこと。そして人間関係というか、それぞれの思いがより見えやすく表面化してきた部分も大きく感じる。
斑目関連の恋愛事がここのところ話のメインになってきていて、すっかり恋愛漫画な風格。
今回の文化祭は初代メンバーの同窓会的エピソードでもあるし、それ以外と部分でもオタクの葛藤もがっつりストーリーに組み込まれてきていて、今回のコミックスの満足度は非常に高かった。
次の段階に話をすすめるステップとなりましたし、更にこれからの展開が楽しみになってきましたよ!
15巻はOVA付き特装版も出るんだとか。TVアニメの出来みて考えようかな。
そういえば今回のオマケ4コマに、珍しく高坂の本心が見える箇所があってドキッとしました。辛辣なようでたしかに愛が感じられて、こんな所でも斑目は美味しいな全く。
『げんしけん』14巻(二代目の伍) ・・・・・・・・・★★★★☆
斑目の恋のひとつの決着。ある意味「初代げんしけん」の真の幕引きという感じかな。