本当のきみなんて要らなかったのに。『なくてもよくて絶え間なくひかる』

なくてもよくて絶え間なくひかる (裏少年サンデーコミックス)

なくてもよくて絶え間なくひかる (裏少年サンデーコミックス)

  • 作者:宮崎 夏次系
  • 出版社:小学館
  • 発売日: 2018-08-17

 

夏次系の清純派。それがこれだ『なくてもよくて絶え間なくひかる』。

コンプレックスや不全感、くだらないこだわりに囚われたりはじめての感情にがんじがらめになって空回り、そしてどうしょうもなく誰かを求めては傷つけてしまう残酷な季節。思春期の災厄と魔法がこれでもかと注ぎ込まれた、高密度の青さを誇る一冊。

俺は夏次系が大好きなのでもはやこの作品が一般的にどう評価されるようなものなのかマトモな判断がつかない状況ではあるのですが、
・読み心地の良さ
・この作家さんならではのトリッキーな構成
・リアルな学園を舞台にしつつ、少しだけファンタジーが入り交じる世界観
・ディスコミュニケーションと、眩しいボーイミーツガール
などなど、夏次系作品のベーシックな要素が詰め込まれている、王道と呼べる仕上がりなのではないかと思う。悪く言えば、過去の作品集で、それぞれの要素をより濃縮したマテリアルが発表されているのだけれど。小学館という新しい舞台で発表された作品であることも影響してか、非常にストレート(メッセージを掴み取りやすい)でここから作品にふれるという人にとって優しい・・・のでは・・・ないだろうか・・・いやわからん・・・・・・・・・

冴えない男子高校の主人公、並木くん。内省的な彼は脳内に大切なオリジナルキャラクターがいたのだけれど、ある日それをまったく同じの意味不明な名前の少女に出会ってしまう。ゴールデンユキコ。このゴールデンが儚げな美少女ビジュアルに反した超絶わがまま性悪少女なもんで、並木くんはずっと振り回されてしまうのだ。

なくてもよくて11

孤独だったりやりきれなさだったり自己嫌悪、あるいは自己憐憫・・・見て知れる半径が小さすぎる思春期。なんなら自分のなかみすら計りきれないのに他人のなにを分かるというのだろう。なにを思いやれるというのだろう。並木くんは本当に接し方がへたくそで、そんな不器用な彼が適当にゴールデンさんにあしらわれていくのを見て笑いもするし、切なくもなる。伝えたい物事が伝わらない瞬間のひんやりとした絶望感・・・。

 

ボーイミーツガールという要素のほかに、本作はテーマのひとつの親との関係性を思春期の彼らがどのように乗り越えられるかという事もあるように感じる。主人公だったりヒロインのユキコさんだったり、いやそもそも過去の作品でもよく見られることだけれど。少年少女にとって身近な異生物、コミュニケーションを取りづらいもやもや~っとした空気感がいいスパイスになっている。そこの窒息感がだれかを求めたいという原動力につながっているんですよね。親からの承認というのは本当に重要で、それがないと自分が何者かもわからなくなるような不安定さが10代の味なんだよな。

それにしても並木くんの父親も母親もクセモノすぎて、そりゃ居場所もなく妄想にふけるようになるわ・・・という納得がある。けれど作品のトリックが明かされた後に思うのは、両親の言葉というのは本当に彼ら自身の言葉なのだろうかということだ。どこかにひとつ、主人公の被害妄想というか、自覚している言葉が散りばめられているような気がして仕方がない。それがどれかは明かされてないのだけれど。(終盤のおじいちゃんの”オッケー。”もうるっと来る)

第12話で明かされるトリック、どこからが現実でどこまでが妄想だったのだろうかと、その境目が見えなくなる瞬間。そこで一旦、信じられるものが何もなくなる。どんな言葉をぼくは言っていた?誰といっしょにいた?ぼくの気持ちはどれが本当?

そこに残酷ながらも答えを与えてくれるもうひとりのキーキャラクタ、竹智さん。

なくてもよくて14

全部本当なんだ。きみとぼくの間の失敗はもう取り返しがつかない。深く傷つけた涙は忘れようもない。嘘であってくれよ。でもなんともならないんだなこれが。

並木くんが夢中でゴールデンさんにしっぽを振っているとき、その様子に惹かれてしまった不憫な悲恋体質女子。いや、俺はこの娘に完全に堕ちてしまったんですよ。上記の涙目のシーンもそうですけど、悲しげな表情やしぐさが抜群に似合う、夏次系ワールドの具現化ヒロイン。それでいてコミュ障・並木くんでは振り飛ばされそうなスピード攻勢よ・・・!なんやねんペロッて!!

なくてもよくて12

はぁかわいい。ふざけんなよ並木。彼女こそ幸せにしてくれよ。いや並木くんじゃムリかな・・・

彼女が別れ際にいうセリフがとことんいいんですよ。

並木くんは・・・きれいなものばかり見てるから
見つけたらずっと見てるから
私もそういう人になれるかと思ったの
並木くんと同じになりたかったの

それはもう、妄想してばかりだった僕をどれだけ救う言葉か知れない。それしかしてこなかった僕を見つけて、その横顔を見ていてくれていたのだ。けれど僕はきみのことを見つめることができなかった。あまつさえ、性急に体を重ねようとして失敗までして。でも決して性欲だけじゃなかったはずだ。なんでもできる気がしたのに。美しいものに、なれたかもしれないのに。

『並木くんと同じになりたかった』というフレーズの重みが凄いですよね。こんな肯定的なことばある? 自信のない思春期のしみったれた男子に、こんなに響く救いあるか?

美しいものをただ見つめている人に。互いを見つめ合うより、おなじうくしいものを見つめていられるような「同じ」になりたかった。でもそれは叶わない。だって彼は彼女を、本当に見てはいなかったから。本当がほしかった、けれど見ようとしなかった。一方的な関係に過ぎなかったのに、並木の意思が弱かったせいで竹智さんを傷つけた。あの日、部屋に父親が乱入しなかったらなにか変わっただろうか?ゴールデンユキコがゴールデンユキコなんて名前じゃなかったらなにか違っただろうか? そんな無意味な現実逃避すら慰みにならない。致命的なすれ違いと、本心から向き合った結果の破滅だった。

なくてもよくて13

ゴールデンユキコと、天井をただ眺めただけの夏の日。物語の終盤は、ほんとうのゴールデンユキコを並木くんが探していく物語になっていくのだけれど、その一幕だ。竹智さんとの物語を終えた後にくるもんだから、こんな質素なシーンにすら感じ入ってしまう。泣ける。ただ静かに肩を並べて寝そべっている。それだけなのに、ボーイミーツガールとしての密度が上がるとこれだけで最高にエモーショナル。このとき、彼女は喪失の予感を抱えていたはずだ。それなのに、静かなその横顔にそんなのもの色ひとつ見つけられないのだ。

終盤はほんとうに名言で殴りつけられてくるのでメンタル弱ってるときに読むことは絶対におすすめできない。昂ぶった主人公が、いつもだったら目を背けているはずの事実をほとんど自虐みたいに確かめていく。自傷行為でしかない。

すげえな、お前。 ひとりでも大丈夫だったんだ、お前。 結局。

悲しがることに浸って肥大化した男の子。喪失、強烈な孤独。これまでの夏次系作品でさまざまなキャラクターが陥ってきた毒の沼。孤独という神経毒。隠しきれない傷で自分も他人も理不尽に傷つけて闇は広がっていく。でも本作は、ゴールデンユキコというキャラクタのもつ生命力にすごく救われているように感じる。彼女は本当につよい少女なのだ。儚げなビジュアルに反して、たくましい。ある意味、コテコテのツンデレとも言えるのだけれど、夏次系先生が描くとどうしてこんな特別な佇まいに描かれてしまう。特別な存在感を纏うのだ。

 

冒頭に述べたとおり、ボーイ・ミーツ・ガールとして魅力的なエネルギッシュさと、作家性が色濃く現れた親密なネガティブ感情、そこに翻弄される若い魂たちの行方が魅力的に描かれる。夏次系先生1冊まるっと描かれた長編でもあるわけで、ここから夏次系ワールドにふれる人にもおすすめしたい。このナイーブな透明と青の世界観に惚れ惚れしてしまうんだよ。本当に。

本作はとくに主人公が妄想の世界に浸りまくるうえにコミュニケーションもろくに取れない、情けない状態の少年なんですけど、そこで共感できる要素が大量にある。そこから主人公がちょっとずつ進歩していくもので、思わず涙腺が熱くなってしまうのです。ヒロインも2人共が魅力的。

カバーイラストのような真っ白な世界に、言葉だけが漂っているような、少なくとも自分にはひどく染み込む物語でした。この作品にピンときたら過去の短編集はだいたいどれも行けるのでは。

 

本当の君を見つけたい。この現実で。その勇気を持って。
ぼくの描いたくだらないパラパラ漫画の起こした小さい風がきみの髪を揺らしたとき。
あるいは君と手をあわせたとき。

本当のきみなんて要らないはずだった、きれいなものばかりを見ていた僕だから。

 

 

 

 

 

 

 

なくてもよくて15

裏サンの背表紙のロゴが絶望的にクソ邪魔オブ邪魔でなんとかしてくれ。

 

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知りたい触れたい確かめたい、世界のはてより君のなか。『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』7巻

女の子たちのどこまでもゆるゆるなクソ平和。その僅か数ミリの裏側にまで忍び寄るアポカリプス。正直面白すぎるし頼むからもっと刊行ペースあげてくれ~~~~~~~1年3ヶ月ぶりのデデデデ新刊がこちらになります。いやでもスペリオールに掲載された読み切り「TEMPEST」も面白かったですね。他にもいろいろ同時進行で描いているのでペースアップは難しいのだろうか。

今回のカバーイラストはマコトくんだ。真打登場の感がある。しかしこうなると次のカバーの予想も難しくなってくるな。男子が解禁されてついに大葉くんか?

後半戦に入って世界の秘密も明かされつつある本作。なにか、なにかとんでもないことが次の瞬間には起きていそうな・・・日常を脅かされるギリギリの緊張感がたまらない。焦らしに焦らしてくる!狂い続ける世界と、ふつうであり続ける少女たちの日常のギャップがどこまでも魅力的。でも徐々にその境界線はおぼろげで融解しつつある。非日常は彼女らの空間にまで染み出してきている。

明らかに世界はマズい方向に突き進んでいて、けれどだれもその流れを止めることができない。当たり前のように日は昇って沈んで、誰かは誰かを好きになって、あるいは殺して、どこにでもある日常であり続ける。終末と隣合わせの平穏。

 

 

 

デ71

まぁそんなことはさておき季節は夏!!オタクども水着回を拝み倒せ!!ビレバンで買った怪しいレコード会社のクラブミックスCDかけながらレンタカーで飛ばせ!!!いやそんなシーンはなかった。水着回がありがたいのは本当だ。

デ72

実はさっぱり泳げないカナズチおんたんかわいすぎません?

前回でポチャった門出もなんとか海までに脂肪を絞ること成功していてよかった・・・っ!まだ若干腹回りがふくよかだけど!そこがかわいい。お前ら本当に大学生かよってくらい、無邪気だ。

うお~~~~~~夏!! きっとこれで最後の夏。読者はさんざんビビらされてるんですよ。地球滅亡までのカウントダウンまでブチ当てられて、こんな晴れやかな夏のひとときをどんな気持ちで眺めていればいいんだ。残酷すぎやしないか。

デ74

モノローグでも触れられているけれど、これから先どうなるんだろうという言い知れぬ恐怖が脳裏につねにチラついている。きっとみんな。この時代に生きる者としての宿命として。けれどどこまで深刻に考えているのかは人それぞれだ。”彼女”は人一倍敏感に、終末の匂いを嗅ぎ取っていた。次の夏ははたしてあるのだろうか。私達の未来はどうなっていくのだろうか・・・

そういう不安を胸にしながらも「普通の夏」を思いっきり満喫する。水着回だなんてはしゃいでる場合じゃない。こんなの、最後の晩餐に近い。覚悟を持って読まざるを得ない。こういう緊張感がこの作品の醍醐味とも思うのですが、巻を重ねるごとにエモさもその裏にある破滅の予感もどんどん強烈になってきて、非常に心臓に悪い。いろんな感情が走りすぎてもう道路は渋滞中。

おんたんの絶叫告白、あそこはもう震えるしかなかった。この時代この状況にあって、数奇な偶然から出会った2人だからこそたどり着いた結論だ。けれどその想いを成就するにはあまりにも壁は高く厚い。ふだんフザけ倒している彼女の胸の内に、こんなにもあつい感情があるのかと動揺しつつも嬉しさも爆発してしまうよ・・・。よく言ってくれた・・・!!5巻の唐突なキスから何歩も進んだ。ゲーオタ少女にもついに恋する季節が。けれどその相手は。そして世界はもう。ああ。ああ・・・もう、世界の残酷さを思い知る。

少女らしい甘酸っぱい彼女は空気を読んでピエロを演じているのだけれど、ふたばちゃんに真面目に反省を促した彼女の表情からもわかるが明らかにこの夏にスイッチが入ってしまっている。おんたんのそういう仮面キャラというか、筋のある2面性が本当にたまらん。しゅき。

でもおんたんも、全部しらなかったフリして全部なかったことして、恋に没頭して逃げ込むことを良しとしないまじめな女の子で本当に眩しい。世界なんかどうだっていいから君のことをだけを知りたいのに、だってその君が、世界をどうにかしちゃう厄介者なんだから。未来よりなにより、君のなかみを知りたいのに。

「だってそれじゃ、大葉がいない世界って事じゃん。」

平和な世界より、こんな終末にあっても出会えたことを嬉しく感じてしまうくらい、あまい熱に浮かされているのに。

 

デ73

 

そして物語はおんたんの秘密にクローズアップしていく。というのも7巻クライマックスで明かされたのはかなり衝撃の事実で、物語の根幹を揺るがすものだ。そしてそのカギはおんたんが握っている・・・!

たしかに気になって読み返してみれば過去にも気になるシーンがあるある。やはり伏線は初期から張られていたというわけだ。その大仕掛けを明かしたということは、いろいろ作品も終盤に差し掛かっているのだろう。

実は思っていたよりもずっと昔から宇宙人は地球にやってきており、ひそかに人間をのっとって生態調査をしていたという。そしてそれをさらに上回る、おんたんの秘密。上記のシーンでもおんたんは自らの記憶に違和感を覚え、苦しみを見せている。消えた、あるいは消された記憶に、世界の命運がかかっている可能性が高い。

ここにきて若干のループモノ感が出てきた。宝田の正体は果たして?っていう言及が作中でもされたが、たしかに進行中の空中都市避難計画である母艦「Osean」って、つまりこれ奴らが乗っているUFO母艦と同じなのでは・・・?そして54話で語られた宇宙人たちの真の目的を照らし合わすと、つまりいま人々が殺して回っている侵略者とは、かつて地球から飛び出した人間の末裔が進化した姿だったのでは、という推測が立つ。彼らからすると地球に残してきたかつての仲間たち(地球人)が思いほかに強く進化しており、宇宙から帰還したところ為す術もなく殺されまくっているということになる。(元)同族同士で殺し合っている・・・虚淵脚本かな?

いよいよ全貌も見えてきちゃったかも知れない。しかしそうなるとおんたんの秘密がいっそう気になるし、そもそも大葉くんはどういうスタンスで地球にいるのだろうか。地球人を関係を築きつつある彼の動向こそがすべてのカギか。

全部ぜんぶブッ壊れちゃうデストラクション、もしかしなくても、もう目前。なんとかしてくれ神様よ。おんたんや門出やみんなが、どうか笑顔でいてくれる結末を。あるいは終末を。

こんな星の夜は 君がいてくれたなら 何を話そうとか。『魔法が使えなくても』

魔法が使えなくても (フィールコミックス)

魔法が使えなくても (フィールコミックス)

  • 作者:紀伊カンナ
  • 出版社:祥伝社
  • 発売日: 2018-07-06

BLジャンルの人気作家さんによる一般向け漫画。紀伊カンナ先生ならではの柔らかで繊細で、甘酸っぱい香りがページから立ち上ってくるような世界観がたまらない。唯一無二の雰囲気が出ているように感じます。
というかR-18でもないわけでBLをあたかも「一般向けではない」と言っているような書き方はいけないですね。カンナ先生の作品のBL作品はかなり読みやすいですし抵抗なければ男性にでもおすすめしたい所。

本作「魔法が使えなくても」は掲載誌こそフィールヤングですが、あの雑誌のメインカラーとはちょっと離れている気がする。でも根底には仕事観にまつわるドラマがあり、そこから広がる人間模様が魅力的に描かれていく。仕事と青春は両立するだろうかと、20代的にはぐっとくるテーマが描かれており、でもそういうのって人にとって永遠のテーマだと思うんですよね。眩しくて思わず息を潜めてしまうような、爽やかで前向きになれる佳作です。

 

各話に主人公がいて、それが群像劇的にクロスオーバーしていく構成。とはいえメインとなってくるのは2人かな。冴えないアニメーターの青年と、彼女のヒモしてるバンドマン・・・と思ったら?という途中で鮮やかなキャラ転換も見どころ。BLというジャンルでセクシャルマイノリティを描きつづてる作家さんならではの、別角度の挑戦も感じられます。でも”そう”と決めつけるのも本作のメッセージに反するので、そこらへんは読んで感じてほしい。世の中、黒か白かではなくグラデーションの美しいグレーが広がっているのです。

群像劇ならではの、キャラクタやセリフが思わぬ所でつながっていたり、影響を及ぼし合ったりといった仕掛けが、本作はあざやかに決まる。同時に仕事について若者が考えるというテーマに沿って、どこぞの缶コーヒーのコピーでもあった。『世界はだれかの仕事でできている』。そして、だれかの夢はだれかの仕事が作ってくれるのだ。

魔法1

人が人に突き動かされる瞬間。心奪われる瞬間。だれかの仕事に、救われる瞬間。

そんなアツい一瞬にハッとさせられるんですよ。

思わぬ衝撃。それが人生を変える。あたらしい夢になる。一瞬にして、憧れを手にする。与えた側にとっては何気ないことでも、当たり前の日常の仕事かもしれないけれど、こんな素晴らしいことを当たり前にやってのけるあなたに感動をもらうのだ。どうしようもなく、燃えるように、体も心も突き動かされるのだ。

一方で、自分になにができるかわからない、なにをすればいいのかわからないと、完全にモラトリアムの迷子になってるキャラクタもいる。自分にとっての『本当』ってなんだろうかとくじけているヤツがいる。圧倒的にそういう人が多いはずなんですよこの世の中。そんなもん当たり前です。無心になにかを頑張れるやつじゃない。でも、そういうカスみたいに脆弱なおれにも響く言葉をくれるのですよこの作品は。

あつっくるしく「人生楽しもうぜ!」とか「本当に自分のやりたいことを見つめ直せ」なんて言われても全然ピンとこないしなんなら言ってきたやつの信頼度下がりますからね。だからこの作品の低体温でナチュラルな言葉がしみるのだ。すべてをハッキリ鮮明に見る必要はないのだ。ただ、ひとまず目の前の忙しくも退屈な日々で、ちょっとだけ心を柔軟に持つこと。それだけできっといい。自然で優しい視界を与えてくれる。魔法が使えなくてもいい。きっと誰かの姿が、自分にとっての魔法になって力をくれる日がきっとくる。でも来ないかも知れない。それでもいいよ。なるようになるさ。

 

ネタバレするがだれも大成功なんて手にしない。それもそうだよ、だってまだまだ若造なのだから。みんな。きみもわたしも。

いいんだ。現実がうまく行かなくても。君が振り向いてくれなくても。夢が叶わなくても。魔法が使えなくても。途方もない未来が目の前にある、ぼくらはまだ生きていける。

 

 

加えて言うと学生時代にうつくしい思い出を作ることができた人間は人生の完全勝利者。

魔法2

泣けるくらい美しいシーンだな。人生に大切なことがすべて詰まってる。

さらっと触れてはいるけれど、セクシャルマイノリティという題材を重苦しくピックアップもしてこない。というか当人たちはなんら特別な意識はなくただ寄り添っているだけで、むしろ周囲がギョッとしているような節もある。重苦しくはなく、けれど軽い気持ちでいっしょにいるわけじゃない。きっと彼女たちの、いくつかのドラマと決心があったはずだ。その関係性に無理解なひとも描かれていて(というか主人公だが)、いろんな仕事があっていろんな人が頑張っているのだいう世界を補強している。みんな違う場所で生きていて、干渉しあいながらも日々は続いていく。いつかの未来で、また会えるだろうか。憧れのあの背中に。あのころ憧れた自分に。まぁそれも、いつどこで人生が変わるかもわからんもので。

 

 

 

止んだ雨と音楽と壊死。『あげくの果てのカノン』5巻

あげくの果てのカノン 5 (5) (ビッグコミックス)

あげくの果てのカノン 5 (5) (ビッグコミックス)

  • 作者:米代 恭
  • 出版社:小学館
  • 発売日: 2018-06-12

感想書くことがちょっとこわくて書けずにいましたが、書き進めることで自分も整理がつくだろうか。と、今更ながらに最終巻の感想を書き進めてみる。 ふだんの紹介的な更新ではなく、完全な独り言を独りごちる。最終巻までと、いくつかインタビューも踏まえての雑感です。

恋愛を描けない悩みに新作で向き合う/『あげくの果てのカノン』米代恭インタビュー(1)

「気持ちの悪い恋愛」を全力でしてもいいじゃないか! 『あげくの果てのカノン』米代恭インタビュー

「なんで私がメンタルの世話をしないといけないの」 不倫×SFマンガ『あげくの果てのカノン』作者と担当編集の奇妙な関係 (1/3)

話の過程でネタバレを含みますのでご注意を。

 

 

 

 

 

 

・・・ひでェ話だったなオイ!

いや、いいんですけど。

最後まで大好きな作品であり続けてくれました。不倫という難しいテーマをきちんと描ききった。インタビューとか読んでも、非常に苦悩の多い作品であったことは伺い知れます。

でも考え込んでしまうこともあるので書く。

 

 

呪いは解けなかったのだ。最悪の形で周囲を巻き込み、犠牲も払って、様々なものを切り捨てて、それでも真っ当な人生を歩めなかった。いや、そもそも真っ当とは、なんだろうかと。幸せであることと正しいことはイコールではなく、むしろ世間から爪弾きにされる恋愛をするしかなかった主人公だからこそ掴み取った結論。 かのん自身幾度となく涙を流し自問自答し、それなのに変わることは出来なかった。 離れて過ごした長い年月でも彼女の盲信的で依存的な体質は変わらなかった。

対象が人からケーキにかわり、仕事に出来たというところがおおきく異なるが人となりは変わらない。 それなのに最後で先輩が会いに来た途端に、コレだ。 本作はかのんの成長物語なのではなく、そんな生易しいものではなく、こうするしか生きることが出来ない強烈な恋愛依存体質の女性の人生を描いた。彼女の業はきちんと示されたし、幸せになるための別の道も拓けていた。 それでもこの結論を選んだのだから 、凄い。 凄いというかそれでこそかのんだ。個人の感想として、 かのんという物語はこうでなきゃ、と嬉しさがあった。 ただ物語としてこのラストを疑問に思うのは仕方ないし、もし落胆されたとしても納得だ。それくらい「やっぱりか」という感覚が強い。

――結婚についてはともかく、結局、米代さんは「不倫」のことはどう思っていますか?

米代:けじめをつければ好きにしたらいいんじゃない?と思っていますね。

――「けじめ」ですか。

米代:結婚までしている人間との恋愛は、他者の尊厳を傷つけることだとは思っていて、それをするからにはけじめが必要だと私は感じます。でも、その尊厳を傷つけて、かつけじめをつけてまでやりたいのなら、外野が止めることではないのかなと。

https://am-our.com/love/429/13601/?p=2

そもそも善悪で語れる話ではない。そんなことわかっているハズなのに、どうか間違えないでほしい、世間から認められるような幸せを掴んでほしいと勝手に願ってしまうもんだから道を外してしまう。別にこの作品を読んで、不倫は是か非かを語りたいわけではない。でもどうしても引っかかってしまってキーボードを打ち込んでしまっている。

こんなに自分が動揺してしまった理由を探してみる。ストーリーに衝撃を受けたわけでもないし、あのラストもまぁ、かのんが出した結論ということに納得はある。

けれどきっとかのんは、もう大丈夫だと思いこんでいたのだ。第28話のクライマックスでモニターにうつる2人を、まるでヒーローショーの観客席に座る無垢な子供のように、大声で声援を送る姿をみて「ああ、よかった」と思ってしまった。本当の主人公はあのひとなんだって、自分は彼らの物語の障害でしかないことに気づいて、それでもまっすぐに彼らを見ることができたのだ。

かのん5

終わらせることができたんだって、簡単に騙されてしまっていたのだ。

作者の手の内でみごとに転がされたわけですが・・・、本当に、心底良かったと思えたんだ。失恋できてよかった。そうだよな、そういうもんだよなって、報われなくて正解だって、それで良かったはずだと疑いようもなく感じていた。不倫だって当人たちが納得の上ならたとえ破滅に向かおうとも選択としては十分にアリだと口では言っておきながら、失恋に涙するかのんに安心していた。とんだ裏切りだ。

かのんというキャラクタをとても好きだったけれど、理解しきれていなかった。まるで分かっていなかった。そのことに対する自分への落胆のような気持ちに近いのだと思う。ショックだった。

同時に、かのんは死んでしまったんだなと思った。進化もないというか、きっと死ぬまで彼女は彼女のまま生きていけるだろうと彼女の強さを信じることができたから。生きていても死んでいてももはや彼女は変わりない。死んでいく物語。ネクロシス。誰も彼女の幸福を否定できない。

置き去りにされたようだ。

ちょうど、この最終巻の拍子はただ静かに佇む傘だ。思えば1巻から4巻まで、カバーイラストに描かれたかのんは合羽を羽織っていた。本作は第一話の「この街は、ずっと”雨”が降っている。」というモノローグで幕が上がる。ひとつこの作品のキーワードを上げるならそれは雨だろう。あの日、あの教室で、先輩がカノンを弾いていた。それに始まり常に大切なシーンでかのんの人生に雨は登場する。合羽は彼女の天候的な日常でもあるし、化物という驚異から身を守る一般人としての彼女の姿にも重なるし、あるいは不倫というタブーを犯してでも雨道を進もうという意思にも・・・強引か。でも、最終巻では雨はあがり、舞い上がった傘は祝福のひかりに照らされ花畑に佇む。役目を終えたように。いや、最初から一回だって使われてない傘だったが。雨は止んだ。止んだのだから。

「かのん」という名前を彼女は恥じてコンプレックスだった。先輩はそれに意味や尊さをもたせてくれた神様だ。恋と錯覚した信仰心だったなんて彼女は気づいていたし最終話で再確認もされる。「私は私のストーリーの悪役だった」なんてあまりにも虚しい真実を直視する。

物語の終着点。最果て。そこに至ってもやはり彼女はいつまでも自分自身に呪われ続ける。呪われ続けて、幸せに居続ける。彼女の人生は光る。それならいいんだよ。物語の果て、いや彼女の人生のその最期にまで響き続けているのかも知れない。自分と同じ名前の、繰り返しのクラシック音楽。果ての果てまで、その音楽は鳴り止まない。この読後感の不気味さ、なのに心の心配がぜんぶほどけていく決着の妙技。素晴らしい。けっきょく物語は倫理で語ろうとするものではなく、キャラクターが己の思考に確信を持って未来を選び取ってくれたのなら、他の問題なんて些細なもんですよ。いろんな人を裏切ってしまった。取り返しのつかない人生の失敗もした。差し出された手を振りほどいてわがままを貫いた。先輩以外を排除して、自分さえも切り捨ててもなお恋は続く。それでいい。そうすることができた彼女がひどく眩しい。きっと自分にはない強さをいくつもいくつも無限に無数に手にして幸せそうな彼女の、恋に浮かれた、年甲斐もない、ぶざまな姿に俺は恋をする。それはきっと俺には彼女がわからないままだからだ。自分にちかい部分と、どうしようもなくかけ離れた精神構造のかのんがたまらなく好きで好きで遠い。

 

終わりますね。
壊死(don’t look back)みたいなタイトルにしてたけどクソダサで公開直前に照れに負けた。

 

 

[漫画]炸裂する無垢なる狂気 『あげくの果てのカノン』1巻

一生の恋を確信する瞬間、そして誰かを裏切る。『あげくの果てのカノン』2巻

高月かのんキレる 『あげくの果てのカノン』3巻

 

 

 

 

いやーそれにしても、担当編集さんを思いうかべながら友人との関係が完全崩壊するネームを切ったというエピソード、最高すぎないですか?

 

君のいた春に灼かれて。『君だけが光』

君だけが光

君だけが光

  • 作者:シギサワカヤ
  • 出版社:白泉社
  • 発売日: 2018-07-31

シギサワカヤ先生のキャリアで初めてGLで統一された作品集。これは歓喜ですよ。個人的にシギサワ先生の作品で何が一番好きかって、作品集「誰にも言えない」に収録されたGL作品「エンディング」なんですよ。シギサワ先生ならではの悪質でリアルな感情描写に女同士ならでは苦しさ、”それでも”って繋がれていく感情が紡ぎ出すあまりにも美しく胸かきむしられる切ないエンディングに連れて行ってくれる。傑作オブ傑作。読んでくれ。

落ちてはいけない恋。きっと報われない。きっと祝福もない。けれど美しい。
そういうのをシギサワ先生は描き続けている。禁忌萌えの権化ですからね。落ちちゃいけない恋だからこそ、面白い。そういう意味で落ちちゃいけない恋なんてこの世にありはしない。

苦しみながらも縛られ続ける。人生ごと灼かれ続ける。触れあえば確かに心は安らぐのに。
本作は女同士だからこそ深く結びついた2つの物語を収録。濃密にシギサワ流百合を堪能できるってわけです。百合かどうかは個々の判断に委ねられるところはある・・・けど公式でGL作品集と言っているので問題なし!

そも、「君だけが光」ってタイトルがですね、すでにギンギンにキマりまくってるんです。君だけが。それはもう縋るように、はたまた諦めのように響く。日本語って楽しい。

 

『スプリングハズカム』シリーズ

通しタイトルがないのですがスプリングシリーズってことで。分かりやすい「こんなはずじゃなかった」ってお話です。人妻となる女性が旦那より式場スタッフの女性に惹かれてしまって、秘密の関係に陥っていく。なんならハネムーンも急遽欠席の旦那のかわりに連れて行っちゃう。ひそやかな関係は制限も多く、そのことに静かな喪失感に苛まれる瞬間はいくるもある。そんな関係も奥さんに子供ができたことをきっかけに瓦解してしまう。

君だけが光1

どうしようもなく、吸い込まれそうな魅惑がそこかしこに差し込まれる。思い悩む主人公にとってそれは完全なる誘惑で、しかし求めても手に入ることは絶対にないとお互いに分かりきっているのに。いや、だからこそ軽率に愚かに手を伸ばす。

堂々と祝えるような関係ではないから、2年10ヶ月という言葉遊びみたいなお祝いをするシーンがふたりの関係性を示していてお気に入り。そして祝われたほうがその真意に気づかないあたりも。届くことを願う一方的なコミュニケーションも祈りのようで、じわりと甘酸っぱいのだ・・・。

そこからの再生の過程は若干性急だったけれどそれは明らかに意図的に感じる。リアルな痛みが目の前にあったとき、途端に覚悟が決まるのがカッコいいよな。私しかいないって、ここで確信できたのだろう。あの楽園にいた頃では決断できなかったことをもっとずっと大人になってから選択することができた性急で切実なストーリー展開にも魅せられる。

なによりラストのふたりがとても幸せそうで、決断を後悔してなさそうな感じでとてもいい。同棲カップルとその子の交流という意味では羅川真里茂先生の「ニューヨーク・ニューヨーク」もとても上手だったけれど、本作もそれに近い価値観が込められていてとても好き。

 

『プレパラート』

前後編で構成された崩壊と再生のGL。いやぁ~~~好きなヤツだ~~~~~学生時代の感傷と失敗をいつまでも引きずり続ける情けない大人に 大人だ 大人になってしまったんだ

高校時代、互いにちょっとクラスから浮いてたふたり。息苦しくも退屈な学校生活で、ささいなきっかけとともに距離は縮まる。なんだか眩しくて羨ましくて、光り輝いているみたいな彼女。その光りに照らされるごとに自らの心に落ちた影は濃くなる・・・

あの娘の描いた絵を恨んだ。私よりも評価されて、私よりも自由で、私に足りないなにかを確かに手にしていて、こんなにも自分自身が惹かれてしまうあの絵を恨んだ。そして穏やかな青春はみじめに砕け散るのだ。自分のせいで。自分も相手も認めることができない、ちっぽけな自尊心の反発で。くだらない八つ当たりで。

・・・学生時代はこんな甘酸っぱく惨めな物語で後味悪く幕を閉じる。
そして再会し、蘇っていく傷跡。大人になってもっとお互いに傷だらけになって、それでもお互いに忘れることも許すことも許されることもできないまま生きてきた。生き延びてきた。その精算が行われていく再生譚。

生きてきた日々の長さが。重ねてきた苦しみの数が。あのころの眩しいばかりのふたりをまったく違う形に変貌させていた。けれどそれでもなお強烈に心惹かれてしまうのだ。彼女の恐ろしいまでの表現力。常人には至れない美しさと恐ろしさ。深く深く潜っていくその背中を見て、あの頃と同じように胸をかきむしられるのだ。

君だけが光2

彼女のようになりたかったのか。
憧れていたのか。
醜い嫉妬か。

ただただ彼女を保護して、彼女のやりたいようにやるのを後ろで見守りながら呆然と傷ついていく主人公の気持ちが、ここまで読みすすめてすっかりナイーブになった心臓にぐさぐさと刺さるのだ。暴力的な才能に圧倒され、やはり彼女こそは特別なんだと確かめる姿は、自傷行為のようだった。読んでてゾクゾクくるし、息が詰まってくる箇所。ズタボロになっても描き続ける女性と、それを見つめながら同じく傷つくもうひとりの女性。こんな不器用にしか繋がれない未来が、ひどく尊いのだ。ましてやここに来て、ようやく好きだって口にすることができたのだから。

ラストへの流れの美しさもさることながら、特筆すべきはエピローグの存在。
雑誌掲載時にはなかったコミックス描き下ろしのエピローグには、遠いとおい未来が描かれており、いっきに時代が進みすぎて心がついていけないところに強烈な言葉が次から次に放り込まれるヤバイ8ページ。タイトル「遠い光」の意味を理解し、置き去りにされたような喪失感と、読み終えて本を閉じたときにもういちど目に飛び込んでくるカバーイラストのあまりの美しさに死にかけるダブルパンチでK.O.

いや・・・この作品、シギサワカヤ作品でもかなり上位の完成度だぞ・・・!!

恋かどうかはわからない。それでも一生ずっと刻まれたままの青春の傷跡で、死ぬまで離れてなんかくれないのだ。でもそんな執着で人生を捧げてしまえば、それはもう恋でなくてもいい。彼女たちだけの関係で、ふたりだけの世界がそこにあったのだ。
言い換えれば、呪いとも言えるのだろうけど。

「灼く」って漢字は光るという意味もあるそうで、なんとなく本作を読んでいて浮かんだ漢字でした。身を苛む業火の炎。「スプリング」シリーズの作中でライトに触れて指を傷つける場面があったけれどまさにそれですよね。苦しみを生む光り。自分自身を照らしてくれる光りでもあった。今の自分も、この先の道さえを教えてくれるような、なくてはならない地獄の光。そんなのを与えてくれる存在、人生にふたりといない。

照らしだされて、ようやく自分のかたちを確かめるように。
君が、君だけが光るんだ。

 

 

 

 

短編にこの曲のタイトルが使われていたので。

本当に愛したいのは。『愛を見せろ』

PCがぶっこわれて新品に買い替えたら初期不良でさっそくカスタマーに出して、とやってたらしばらくPCのない生活を送ってました。タブレットとスマホがあればネット依存症でもそれなりに生きていけることを確かめてしまった。いまは新しいマシンで快適に過ごしてます。

今回コミケに三日間とも参加したんですけど、ああいう場に行くと自分もちょっとはなにかをしてみたくなるというか、まぁやれるのはこうしてダラダラとくだを巻くことなんですが。

愛を見せろ (it COMICS)

愛を見せろ (it COMICS)

  • 作者:ふしみあみ
  • 出版社:KADOKAWA
  • 発売日: 2018-08-10

コイツはいい。すごく素敵な本です。なんたって1巻で終わる(ポンポさん流)
短いなかで気持ちよく物語は進み、感情は揺さぶられ、がっつり後引く余韻。コントロールが行き届いていて最高のタイミングで手を離されるような抜群のストーリーテリング。

試し読みなどはこちらから

みんな欠けていてみんな孤独で、だからかなんとなく居心地が良くて出来上がった不思議な3人のオリジナルなコミュニティ。父親に捨てられ将来を諦めたJC、なみ。離婚して妻子と別居中の教師、長川。彼の息子だが母の再婚相手のDVを受け、学校でもいじめにあっている小学生、けんた。

疑似家族もの、一手をミスると途端に説得力にかける転落を見せることもあるけれど本作は絶妙のバランス感覚で描かれていく。家族というか、寄る辺なのだ。欠けたそれぞれが感情持ち寄ってぶつけ合って、まあるくなめらかに均されていく。

シリアスな展開ももちろんある。心くじけてしまった人間の闇や、貶めよう傷つけようというこの世の悪意や、自分すらも許すことのできない自らの弱さを見せつけてくる。

愛を見せろ2

画作りからセリフから、かなりアツく丁寧に練られていることが伝わってくる。作品を包み込む優しさや、マイナスな感情も否定することなくみんなが苦悩して、するどく毒を吐きあったり、けれど許容しあえる。関係性がゆるくて暖かで心地よいのだな。

暗い空気になりがちなところをうまく明るく持ち上げてくれたなみちゃんのキャラクタも良かったし、長川先生のぶっきらぼうながらに見守る姿勢も甘酸っぱい。けれどクライマックスで相手をめちゃくちゃに殴りつけたシーンがあるけれど、あの場面をただじっと息子が見つめている場面は胸に刺さりましたね・・・。ああ、もう、取り返しがつかないのだなと。

作中で「愛を見せてよ」と、タイトルに重ねたセリフが出てくるのですがそれがすぐさま「見せてるだろうが」とぶつけられる、この虚無。見事。必死なのに伝わらない。空回りした愛情表現でもあるし、そもそも受け取ってもらう気のない一方的で暴力的で自虐的ですらある愛し方。自暴自棄になった長川に立ち直らせようと発破をかけるなみ。そこからゆっくりと雪解けするように、やさしいエンディングへと向かっていく。なみと長川先生の関係性もツボでしたね。相棒のような。

そしてラストシーンの、妙にあっさりとした空気が余計に味わい深さを増している。みんなそれぞれの行き先へ向かっていく。あの寄る辺はもう失われた。ここをラストシーンにすることに最初はじゃっかん物足りなさを覚えたけれど、2回めに読んだときにはこの小ざっぱりとした結末が非常にらしいというか、男前だなと感じた。素敵な終わり方だ。終わり方がいい漫画は最高だ。

というわけで1巻完結ながらかなり感情を動かされる楽しい一冊。出来のいい単館ものの邦画を見終えたような読み応えでした。女性誌連載ではあったけれど普遍的なヒューマンドラマとして成立しているので幅広い方に読まれてほしい。

本当に愛したかったのは、もしかしたら自分たち自身なのかもしれない。愛してほしいと泣いていた、あのころの自分だ。けれどこの物語から未来に向かうキャラクタたちは、きっともう大丈夫だと信じられる。

 

ところで「愛は見せろ」はかつてコミティアに発売された同名の同人誌が存在しています。

愛を見せろ1

3年前の本。タイトルが同じだけで内容もキャラクタもまったく異なります。俺はコミティアで買っていたのですが作者までは覚えてなくて、今回書店の新刊コーナーでこの本を見かけたときに「どっかで見たタイトルだなー」と引っかかって購入。こういうふうに出会うこともあるんだなぁ。それでいて、めちゃくちゃいい漫画なんだから。電子書籍が便利で徐々に移行している最中ですが、こういう遭遇ができるからやはり書店はいい。

ちなみに同人版はクズ旦那が不器用にしか妻を思いやれずDVにまで発展し、切ないエンディングを迎える作品なのですが、そのラストの物寂しい花瓶の存在感だけで明らかな名作。なんか拍子に読んでみてほしい。

ホームからMUSECAが消えるのでオススメの曲を紹介します。

 

DgwP2UAU0AAErFJ

 

(おそらくだが)最後のMUSECAをプレイしてきた。

ホームのゲーセンでは今週末に撤去される予定らしく、近隣のゲーセンにも生き残る筐体はきっとない。ぶっちゃけ不人気ゲームだった。でも俺はこのゲームが好きでした。

MUSECA

がっつりプレイしてた人からすると大したことのない感じですが・・・アーケードの音ゲーでは1番お金を使ったゲームになりました。

知らない人にかるく説明するとMUSECAってのはBEMANI系音ゲーのひとつで、珍しい要素というとダイヤルみたいな円盤を回すアクションと、ペダルを踏むってところか。まぁ基本的な操作方法はポップンみたいな感じです。これで知らない人にわかるのか・・・?

アーケードの音ゲーというとSDVXがメインだったんだけどMUSECAが出たら操作感も面白さ、プレイしてて自然と体が動いちゃうようなリズミカルさに病みつきになった。とは言っても初代MUSECAというのは不親切極まりないUIだったり謎世界観を押し付けてきたりを決して褒められたもんではなかったけれど、純粋に操作が面白かった。

あと曲もぶっちぎりに好みだった。

音ゲーによくあるギュオアア~~~~ギュンギュンギュン!!!!ヴヴヴイィィン!!!ギュアッギュア!!的なやつの他にも多種多様なジャンルの音楽が収録された。おいおいダブステップは最高だろ。デッドプールも言ってたもん。
一般から公募された楽曲も総じてハイレベルでとにかく飽きない。MUSECAのサントラが出なかったことが惜しすぎる。なんとかしてくれないかなコナミ…

 

なぜMUSECAは生き残れなかったのか。
初速でコケたとか反応しない筐体があったとか色々・・・色々言われてますが・・・まぁ今や生き残れる音ゲーってのも選ばれたものしかない気がします。切ないけどそういう競争の激しい時代だったので仕方ない。個人的には大好きな機種でしたけど、正直いってこのゲームで順番待ちになったことなんでほとんど無いし、プレイ人口少なすぎましたわ。

 

もったいないので好きな収録曲を紹介していく。
勿論これらの他にも名曲目白押しです。気になった人は調べてみてほしい。

オッシャレ~。でもLV14にしては相当難しかった。何度もプレイしてその度に腕がしびれたというかPa’s Lam systemが良すぎる。ほかの曲もひたすらにおすすめ。Bit by Bitとか。

 

稼働当初よくプレイしてました。初心者が助けられる名曲。ボーカル曲だし、非常にいい疾走感と切なさを共存させている泣きの一曲。サビ前一瞬のブレイクでスピンをひっぱる操作があって、曲とのシンクロでハチャメチャに気持ちよかった。

 

MUSECAが脚光をあびた数少ない機会のひとつかな。ヒット曲でした。ペダルをべんっべんって踏みつける感覚がめちゃくちゃ楽しかった。

 

これは曲も最高だし譜面も最高だった。サビ部分で腕をブンまわすようなド派手な動きになりがちなんだけど、とにかく爽快でPOPだ。

 

アーケアでもPSYQUIさんの曲をプレイするけど、ほんと幾何学的で気持ちいい曲をつくるメロディメーカーです。この曲はMUSECAのわりと末期のころに登場し、あまり知名度が上がらなかったもったいない曲。

 

SDVXとの初コラボで移植曲に選ばれた名誉ある?曲。操作してて面白いしなにより電子の世界を高速で動き回ってるような音像が気持ちよすぎる。ロックマンエグゼのBGMみたいに思ってました。

 

指に移植されたりした曲。和な音色とキャッチーなメロが完璧。耳にこびつくようなインパクトがありましたね。人気あるのも頷ける。

 

曲とジャケ絵の合わせ技でとても好きな曲だった。小さな妖精たちが気の向くままに遊んでいるような、それなのにどこか甘酸っぱい雰囲気も醸し出してくるものだから。

 

一音目から泣かされる。なんなのこのノスタルジックな世界観は。譜面は可もなく不可もなくという印象ですが曲がよすぎる。サビ部分の盛り上がり、最高。

 

意外と無かった管楽器が暴れまわるジャジーなテイストな2周年記念楽曲。なおその後長生きできなかったが・・・でも曲も良かったし譜面も楽しかったですね。MUSECAの面白さを、両面から詰め込んだようなバランスのいい曲でした。

 

ジャケのとおり、あの娘です。てことで早い段階でSDVXに移植されました。LV14練習用にはとてもいい難易度でした。お世話になった。連打がきもちいい譜面。

ザ・アニソン!ってばかりの激しいリズムと高揚感あるサビメロが心地いい。初心者向け譜面でしたけど叩くと素直に楽しくなれる。サビのスピンができなくて最初のころ苦労したなぁって思いでが蘇ります。

 

ドラマチック~~~~~。それがテーマのコンペ採用されたわけなのでそりゃそうなのだけれど。勇ましいメロが好みでした。ボーカルも迫力ありますねぇ。歌詞もよく聞くとドラマチック~~~~~

 

いやホントMUSECA初期のボーカル曲はどれもPOP&キャッチー&ハイクオリティ!!この曲も最初のころよくプレイしました。なかでもこの曲はサビでの化けっぷりが大変です。ぜひ一度聞いてみてほしい。

結構リズムを取るのが難しかった記憶がある、初期からあった曲。曲単体として聞いてもめちゃくちゃキレイな曲だな・・・。ジャケの雰囲気も抜群。

 

MUSECAで君臨したボス曲。後年、メテオラというもうひとつのボス曲も登場しましたがやはりこの曲に圧倒された記憶が色濃い。

 

個人的に1番思い入れのある曲です。1番すきと言い換えてもいい。ジャケの女の子に一目惚れしたり、曲に一耳惚れしたり、この娘のグラフィカを開放するためにいっぱい練習したなあ。けっきょく97%が最高で、開放できず仕舞いでしたけれど。せつない。

 

MUSECA3

 

自慢です。好きな絵柄のe-PASSを作ってもらえるキャンペーンに当選して、迷いなく選びました。大切に保存します(使えない)

どこかでオフライン可動する筐体が見つかることを夢見つつ
たのしく遊ばせてもらったゲームの一区切りとします。
MUSECA、楽しかったぞ・・・