インターネット、僕らの呼吸が夜になり音楽になる。『バジーノイズ』2巻

とりあえず、しゃらくさいシティポップを聴いて口の中をセンチメンタルにしていくか。

SHE IS SUMMER / 出会ってから付き合うまでのあの感じ

ふぅ~~

 

 

「出会ってから付き合うまでのあの感じ」だァ~~~~~!?!?!?

 

 

・・・

よし!

 

 

バジーノイズ

バジーノイズ

  • 作者:むつき 潤
  • 出版社:小学館
  • 発売日: 2019年01月11日

 

バジーノイズ2巻が発売されていますよ、しばらく前に。
先日発表となりましたが、なんとバジーノイズをベースにライブイベントが開催されるみたいですね。その名も「バジーノイズライブ」まんまやんけ。でもせっかくリアル感ある漫画なので、こういった体験型の音楽イベントが出来るのは素晴らしいですね。ファンはぜったい行きたくなるやつ。参加アーティストが素で気になる。

作品のクレジットを読むとわかるように、地下室タイムズさんが協力していることもかなり影響しているような気はしますね。あそこはもはや完全にひとつのメディアと化していて、サイト単体の企画でフェス型イベントを開催できてしまう影響力があるし。主催の石左さんがいつだったか、一度会ってみたいバンドマンにGrapevineを挙げたら偉い人に「いつでも会える人じゃん」的なこと言われキレてたのがかなり好きなエピソードだ。

 

そんなことはさておきバジーノイズ2巻である。スピリッツにて連載中。

一巻の感想は前にアップしました。
夜に静かに飛び散った、ぼくらのSNSミュージック『バジーノイズ』1巻
1巻は主人公の清澄と、彼の日常を破壊していくサブカルガール潮のふたりでほとんど展開していった。ゆっくりとした進行だ。それだけ、清澄というキャラクターが外部へのドアを開けるのに時間がかかったという証でもある。

ただ2巻からはサブキャラも出揃いはじめ、徐々にではあるが世界がひらけていく。いや、膨らんでいく感覚。1巻のストリートライブの興奮は、読者も作品そのものも突き動かしていく。

相変わらず清澄はなにを考えているのかいないのか、ふわふわと漂うような生き方をする男だ。しかし世間が、世界が、彼がひとりでいることを許さない。いつしか彼の周囲には、本気で音楽をしたい奴が、人生行き詰まっている奴が、仕事と情熱のはざまで揺れている奴が集まってきている。

1巻で清澄は自分だけが楽しめればいいと、それで満たされる生活があればいいと言う人間だった。自己満上等。それでいい。はずだったのに。

 

バジー22

 

突き動かされたのは外野だけじゃない。当の本人だってあてられたのだ、あの興奮に。
音楽はそういう作用がきっとある。大好きな音楽に触れて、形作り、流し込み、高く飛べるようになる瞬間。そういのを与えてくれるはずなのだ。

というわけで、1巻よりグッと積極性を見せてくれる清澄くん in VOl.2
なんてこと無い変化だけど、代えがたい輝きがある。
臆病な少年がゆっくりとこちらを振り向いてくれたような、そんな嬉しさだ。

 

 

清澄のスタンスはこの作品の雰囲気をそのまま写し込んでいる。
音楽に全幅の信頼なんて置いていない、そんなもの置いちゃいけないことを知っている。本気になってもうまくいかない現実におびえている。傷つかないように「これでいいんだ」と自分だけの世界に浸っている。フォロワー数とかRT数に一喜一憂して、そんなことで本物なんて知ることはできないと薄々わかっていながら気楽で居心地いい価値観に埋没して。自室のモニターから世界を見て、わかった振りしたりして。

そういう空気感。あきらめも希望もぼんやりとした蜃気楼の向こうがわ。リアルなとこなんだと思うんですよ。リアルがなによりリアリティが薄い。感情も、評価も、存在さえ。

「どうせ」と「そもそも」と「もういいや」と・・・
そういう世界観を、清澄自らが突破していくことの気持ちよさ。
2巻、明らかにエンジンがかかり出している主人公にとても気分がいい。

 

 

清澄も好きだけど個人的には調子ノリまくりのサブカルガール、潮ちゃんがお気に入り。いつか絶対炎上して「どうしよ~~~~」って涙目になってて欲しい。アカ消しまえに醜態をさらす女であってほしい。間違えた。清澄をむりやりに引き上げていってほしい。だれかに求められること、寄り添い音楽を奏でることの心地よさを、彼に教えたのはきっと彼女なのだから。

バジー23

それにしてもすげーナチュラルにいっしょに風呂はいってて草ですよ。

まじかー。1巻でも匂わせ描写はあったけど。え、個人的にはふたりは付き合わないで欲しい・・・・・・いや付き合ってるかな・・・たぶんヤッてるか・・・なにげにショックだ・・・やっぱりバンドマンなんてクソなのか・・・

 

 

そんな潮。いつも暴走気味、炎上気味な彼女がふと、物思いにふけるシーンがある。

「出会わんかったらよかったと、思われてないやろか」

と。ああ、そういうことに怯える女の子でもあったのかと、再発見した気持ち。第一話でイタい目みていたので、ちょっと人間関係に臆病になってしまうところもあるはずだろう。それが普通なのに、意外とそういう一面を見せてこなかった潮。かわいい。かわE超してかわFやんけ。

彼女のそんな悩みに、さっそくアンサーがだされている。

1巻末のストリートライブでもそうだけど、清澄はここぞというときにモノローグを通じて感情を顕にする。2巻でもそう。前座としてステージにあがって、音楽を奏でるとき、ようやく彼は語りだす。音楽に合わせ、饒舌に、言葉が引きずり出されていく。

バジー24

ありがとう、だなんて。

ひとりきりの世界の壁を、文字通りブチ壊してやってきた潮を思い浮かべて、
こんな優しく微笑んで歌える。音楽のせいに他ならない。

誰かの前で歌えることは嬉しくて、出会いは嬉しくて、音楽に苦しむこともきっと嬉しい。それはひとりでは出来ないことだから。

 

 

 

おれがツイッターでポチポチとふぁぼリツするその向こう側で、だれかのドラマが動いている。そこに涙もあれば幸福もあり、突き進んでいく熱がある。そして自分もそのうねりの片隅に居場所を与えてもらっているような、そういう温かみとか感動がある作品なんですよ。すごく自分と距離が近い気がするんです、なんとなく。ステージでめちゃくちゃにかっこいいライブをするバンドマンを描いた漫画でも、こんな感覚にはきっとならない。インターネットによってつながる感覚というは、現場で音を浴びるのはまた別次元の快感なのだ。

それと同時に、つながりを一概に是としないような、孤独になにかを突き詰めることを否定しない空気感も魅力的だ。シニカルなシティポップの手触りのまま。

もちろん、せっかく音楽なのだから、その音を生で浴びれたのならそれこそ幸せだし、快感だ。いこう、バジーノイズライブ!この世界に生で触れることができるぞ!

・・・俺は金がないのでいけませんが。転職活動ついでに行けるか?無理か。

 

 

バジー21

 

いつまでもこんなしゃらくさい見開きが好きなので多分きっと一生そう。

インターネットで簡単に世界と繋がれるこの時代に、スマホも見ずに手ぶらでゆったりと、夜の岸を歩くのだ。
世界と自分と、海と陸と、夜と朝と、音楽と”ぼく”の、それぞれのはざまに。

浸って読むにぴったりの漫画です。

 

 

 

 

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いびつな君、いびつな歯ならび、いびつな愛。『不完全で不衛生でふしだら』1巻

不完全で不衛生でふしだら 1

不完全で不衛生でふしだら 1

  • 作者:すのはら風香
  • 出版社:KADOKAWA
  • 発売日: 2019年01月25日

コンプレックスでグズグズしている少年に、かわいいけど変態な少女がグイグイくる。
なるほど、好きなヤツですね・・・!

本作でデビューとなるすのはら風香先生はもとは同人で活動していて、この作品もコミティアで発表された作品がベースとなっています。これで賞を獲得し、そのまま連載化となりました。

【C91/コミティア119】創作男女本サンプル | すのはら風香 #pixiv https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=60564696

個人的にもこの同人誌が好きだったので、連載となったのがとても嬉しかったですね。主人公の腐りっぷりと女の子と仲良くなれてしまったことの感動やとまどいが程よく合わさっていて、まさに思春期のクソガキなんですよ。かわいくてたまらないわけです。

ポイントはやっぱり、コンプレックスの逆転。
主人公は歯並びが悪くて、それを気にして常にマスクをしているとうまく周囲にも溶け込めない鬱屈っぷり。どうやら過去にトラウマも抱えているようだし、完全に陰キャ。口内コンプレックスこじらせ男子。

ふしだら11

なのにその少女は、突然現れて突然顔を掴んで、そのコンプレックスに素手で触れてくる。

とつぜん顔掴んで口ん中に指つっこんで、ぐりぐり、ねっとり、一方的に愛を告げてくるのだ。俺にじゃなく。俺の口内に。

同人版ではもっと主人公の歯並びが悪くて良かったんですが、コミックス版はじゃっかんマイルドになっているかな。でも、この歪んだ関係性にビビッときてしまう。

主人公の歯並びに強い興味を持つヒロイン、麻衣子。歯医者の娘だから幼少のころからいろんな歯並びを見ているうちに、たぶんあえて美しいわけじゃない個性的な歯並びを好きになっていったんだろう。
そんなわけで主人公と麻衣子はたびたび学校で、こっそりとイチャイチャしているわけです。飯を食べてるところ観察したり、歯に触れてみたり、ハミガキをしたり。・・・イチャイチャか?これ?
こんなんセックスとなにが違うんだ。なにが違うってんだ! 2度言った。

 

人様には見せられない、きっと納得も同意も得られない、ふたりだけの理解と接触の性愛。

人のコンプレックスも、美しくない歯並びも、そこにずけずけと触れてくる行為も、グロテスクなものだと思う。きつい言い方になってしまうけど、本来秘密にしていたいものだ。誰かに無遠慮に触れられたら痛むのだ。なのにそんな忌避されるべきウィークポイントに土足で踏み入って、たやすく触れてくる。そんなことほんとは許されないのに、彼女はその人のいちばん敏感なところを撫でてくる。グロテスクな行為だと思う。

けどそのグロテスクな接触が、こんな甘く映る関係性。ちょっとインモラルで、とてもクローズドな行為を通じて、恋愛未満セックス以上の世界が繰り広げられていく。
“ボーイ・ミーツ・ガール”って感じなんだよな。
やっぱり欠けたところを愛してくれる、違うもので満たして「あ、これでいいんだ」って思わせてくれるような救いの存在。都合がいい夢。そしてそれが相互であればもっといいわけで。

そういう意味ではヒロイン・麻衣子の特異性・異常性が作品のキーとなっているにも関わらず、作中ではそんなに浮いていないっていうのが意外なところかも知れない。

まぁ、だってね。かわいいもんね。

ふしだら12

はぁ~~~~~~~~~~~・・・・・・ コラッ!!麻衣子!!だれにでもそんなふうに微笑んでいるんだろう!? 「えっそんなことないよ!」「えっ、」「えっ。。」ってなるやーつ・・・(ED先生文脈

いや、手にしたペンチが不穏ですが・・・ いい。いいですよこれは。主人公にとって言い過ぎでもなんでもなく、神様みたいな女の子に映っている。どれだけ救われているか、どれだけ惹かれているかそれだけ主人公自身がどこまでわかっているのか・・・コラッ湯上麻衣子!いま気づいたけど名字が「ゆがみ」じゃないか!(今かよ)

 

変態性癖ラブコメヒロインとして必要な動きは十分にしてくれるし、小悪魔なのにちょっとポンコツなところが愛くるしいですね。気を引くためにあえて日課の歯磨きプレイをお預けしていたのに、主人公がとくに気にしているそぶりも見せないもんだから寂しくなって自分から言い出しちゃうやつ。はぁ~↑↑ こういうところなんですよ。いやらしいことはたくさんしてるのに付き合ってもいないし不思議な妙ちくりんプラトニックなバランスがいい。

 

 

あと、なんか興奮の度合いがやばいです。

 

ふしだら14

 

・・・。

彼女いわく、主人公の歯並びはあまりにも性的に卑猥すぎるためもはや顔面男性器と呼べる代物となっており、おもに下半身が大変なことになってしまうようです。

・・・読切版よりストレートに痴女になってんな!
これが「商業版」ってことか・・・!

しかして、個人的にはもっとインモラルな方向性に行くかという期待もあったりしていたので、1巻を読んだ限りでは変態性癖ラブコメとしてちゃんと電撃系列な作りになっていると思うが、ほんのりと物足りなさもある。

もっとドロリとした要素も欲しかったなぁ。「よからぬ関係性が始まってしまったぞ・・・!」という胸の高鳴りをもっと感じていたかった。かわいらしい2人なんだけど、あのむわっと湿り気の感じる質感がもっと出ていれば最高だった。

まぁ、かと言って麻衣子の特異性が作中でことさらに話題になって彼女が学校で迫害されたりとか落ち込むような展開なんて見たくない!俺は生ぬるいラブコメ時空でねっとりしていたいんだ。俺をここに捨てていってくれ。歪んだ性癖を許しあえるこの楽園に・・・。いや彼女の性格だったらうまく生き延びるだろうな。擬態、うまいもんな。

人様にはなかなか見せられない二人だけのオリジナルの性愛を描く作品なので、ディープにゾクゾクさせてほしいなという願望はあります。「どう展開されるんだろう?」という疑問については、1巻を読み終えても依然あったりする。
頼む!心配にならない程度にくらいムードの中で切実に求め合う”ふしだら”な少年と少女を!ド性癖!あと逆に麻衣子ちゃんが自分の口の中をまじまじ観察される羞恥プレイ絶対来てほしい。

どんどん深めていってほしい、この愛しくも歪な関係の、その甘やかさを。

 

 

 

ふしだら13

あとどんどん濡れていってほしい。

クリスマスだよエロ漫画2018!

クリスマスだよエロ漫画2018!

ブログも移転して一発目のエロ漫画クリスマス更新となりますが・・・
前ブログから数えると8度目となりました。年末のクッソ忙しい時期にいっきに一年分エロ漫画を読み返して書き上げているのでいつも12月中旬の記憶が薄い。そんなヤケクソムーブを続けております。

 

前回↓
クリスマスはエロ漫画だよ2017!

 

ということでつらつらと書いていきます。
抜いた、泣いた、染みたなどいろんな基準はありますが今年発売されたエロ漫画で好きな作品を10個選びました。それプラス番外編として追加でいくつか紹介します。

 

当たり前ですが18歳未満の閲覧は禁止でお願いします。

それにしても前回の「セッちゃん」の更新からの落差よ。

 

 

 

 

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付き合わないよと笑った 君と ならんで帰った。『セッちゃん』

 

セッちゃん (裏少年サンデーコミックス)

セッちゃん (裏少年サンデーコミックス)

  • 作者:大島 智子
  • 出版社:小学館
  • 発売日: 2018-11-12

 

セッちゃんの「セ」は  セックスの「セ」だった。

セッちゃんを見守るようにそばにいるようになったあっくん。ふたりの大学生活をゆるく描いていく作品。けれど第一話の冒頭から示されているように、抗えない圧倒的な暴力性が内包された作品でもある。

いろんなところで見かける「あの絵」の人、大島智子さんの初の漫画作品。ヴィレッジな波動を感じたならそれは正解です。俺の大好きな、しゃらくさい漫画です。

この作家さんを最初に知ったのってなんだっけと思い返すと、たぶん泉まくらのMVでしたね。

 

こんなにデフォルメされたかわいいイラストなのに、なんでこんなに切ないんだろう。女性の生活感とか、だれにも見せないかわいいところとか、メチャクチャかっこ悪いとところか、なんかぜんぶ空気で伝えてくる絶妙の筆致。たまらん。

そもこの表紙もいきなり心を掴まれてしまう。色彩のうすいぼんやりとした曇り空としずんだ街、まっすぐにこちらを見つめる女の子と、少しだけ赤いほほ。

初の漫画となった本作。やるせなくて、キラキラ光ってて、夢見てるみたいにふわふわしてるのに痛いくらいに鋭いリアルが描かれている。こんな優しいタッチなのに描かれるのは性と暴力の世界についてだ。喪失感と浮遊感で胸がいっぱいになる。

連載は読んでいなかったのでこのコミックスで初めて読んだのですが、おもわぬ方向性に進んでいく物語にハラハラしてしまった。こんなゆるふわでドリーミーでポエミーでラブリーなのにあっさりとテロで人が死ぬ。緩急つけすぎだし速度も出すぎである。でもこのコントロールされきってないテンポ感も魅力だ。

 

なにより魅力的なのは、ムカつくけどこういう大学生活に憧れたなぁ、という憧憬だ。くしゃくしゃのシーツ。コンビニ袋にはいったままのジュース。片付け忘れた洗濯バサミ、薄着の彼女が眠っていて。0.02mmのパッケージとアポロチョコ。それが当たり前のようにそこにある。とても俗っぽい。とても生っぽい。この生活感とエロスが完全に地続きになっていて、そこに感動がまるでないことが感動的。

セッちゃんとあっくんはたぶん似た体温の持ち主だ。あっくんは幾分器用なので、自然にふるまうことで「こっちがわ」でい続けられる男の子だ。本質は非常にドライで、虚無を抱えている。

あっくんとセッちゃんは同じように空白を胸にかかえていて、その虚無が反響しあうように心が接近していく。互いにパートナーがいるので、それは恋ではないけれど。

セッちゃん1

くだらないことをしているって見抜かれて、そして共有できてしまう。静かな空間に強烈なシンパシーでつながっていく。

 

大学生にとっての『リアル』ってなんだろうと考えた時に、周囲となじめないコミュニケーションだったり、足りない単位だったり、彼女と汗だくックスがしたいという夢だったり、なにかの思想に取り憑かれてしまうことだってひとつのリアルだろう。

この作品はちょっと前にネット上でも盛り上がってたSEALDsをモチーフとしたような描写がかなりあって、その時点で俺は「ゲッ」と思ってしまった。そういうのに極力触れたくなかったので。彼らの思想の是非なんてどうでもよくてそういう刺激を受けたくなかった、考えたくなかったというのが正しい。だって怖かったのだから。

個人的にネット上で政治的なことを極力言わないように意識はしてますけど、それは自分はなんにも考えてない上に学もないアンポンタンなのがバレてしまうので余計なことは言葉にしないというのが大きな理由なんですね。なにかしたい、なにかで自己表現したい、鬱憤から開放されたい、でも何にも手に付かないというエネルギーばっかり溜め込んだ若者がネットで蓄えた知識で勝手な正義感で達成感を味わえちゃうのは分かるので、俺も違うスイッチが入ってたらハマっていたのかもしれないという恐怖はある。宗教とかと同説に語るのは違うけど、興味ない人種からすると同じだけ近寄りがたくて、けれど意外とすぐそばにあったりする。

というか大学の時、巻き込まれてデモの紛い物みたいなのに強制参加させられたりもしましたね。名古屋でプラカード持たされて。なんだったんだ。速攻抜けて映画館でアニメ見た。まぁ、そういう活動がある大学というのは調べてみると案外珍しくはないみたいです。最初やべーとこ来ちまったと思いましたけど。

 

 

脱線しましたが・・・そういうリアルを思い返すに、この作品に描かれているようななにか使命感に燃えてデモ活動をしている若者たちも、団体がエスカレートしだして「犯罪まではするつもりじゃなかった」とびびりだす群衆も、達観してか興味がないのか頭が悪いのか「なにやってんだろ」って後ろから冷めた目でみてる人々も、みんないっしょの世界で生きていることが本作ではストレートに表現されているなと改めて感じる。

セッちゃんの乾燥した生き方とそれは対象的だ。デモに参加する若者たちは意味不明なエネルギーに満ちていて、怒りと使命感に突き動かされていて、世界を変えようとしていた。セッちゃんはそんなこと望んじゃいないしきっと考えたことなんてなかった。いつだって彼女は、周囲に自分を受け入れてもらおうと必死だった。
弱い生き物だった。

セッちゃんはそういう忙しい世の中からずっと置いてけぼりにされて、ずっとズレちゃってて、へんな目で見られて、少しずつ生きづらくなっていって、そして息が続かなくなってしまった。かわいそうな女の子だった。

主人公も述べているが、あのタイミングでなくても、誰かの殺意に選ばれてなかったとしても、たぶん彼女のこの世界にうまく適合することが出来なかっただろうと思う。

やさしくされた。だからお礼にセックスをした。
それは彼女にとって当たり前のことなのに、まわりなそんな彼女をみて小馬鹿にしたりあるいは近寄りがたいを感じたり、あるいは下心を持って近づいたり、彼女はひたすら周囲から搾取されていく。それが彼女にとって1%の幸福だった。決して満たされない、けれど一瞬心が安らぐ瞬間だけがほんのすこし彼女に居場所を与えていた。

描かれるセッちゃんはふわふわと空気みたいにそこにあるだけの存在で、意思はなく、誰かまかせの日々をずっと送っていて、セックスばかりしているのも誰かから求められることに真面目にきちんと応えてしまっていたからだ。
居心地がよければそれでよかった。愚かだった。でもそれって人にとっての1番の「ほんとう」だと思う。
切実で、ときに最も得難いものだと思う。
居心地を求めて生きてるよ、それだけだよ本当に。

セッちゃんのことを100%理解なんてできない。理解できたらきっと俺は安心できるのに。なんでこんなに胸がざわつくのか、理由を知ったら俺は「なるほど」って落ち着きを取り戻して、たぶんもうすぐセッちゃんのことを忘れてしまうだろう。
希薄な女の子だった。

 

セッちゃん3

 

大好きなシーンだ。セックスしなかったね、なんてわざわざ確認しあったりして。
あんなに縋っていた肉体のつながりなんて要らなかったのだ。たしかにセックスは楽だった。それだけしていれば「ありがとう」も「ごめん」も要らない気がした。身体だけで安らげた。けれどいまセッちゃんはそんなことをしなくても通じ得てしまったのだ。そんなことをしなくても男の子を好きになれたし、好きになってもらえたのだ。まるで冗談みたいに。

。もしかしたらこの時点で彼女は「セッちゃん」ではなくなってしまって、だから物語からいとも簡単に消えてしまったのかもしれない。

セッちゃんは欲しがっていたものを手に入れていたのかな。遺された彼女のテディベアみたいなポーチにはコンドームが入っていた。胸が締め付けられる。でもあっくんとセッちゃんはセックスをしたら壊れてしまうような儚い関係にも思えて、すべてが壊れてしまう直前の、幸福のさなかに好きな人の前で命を落としたセッちゃんは、もしかしたら案外人生に満足していたのかもしれないな。勝手な想像だけど。
セックスを通じてしか他者とつながりを持てない、色を持たない女の子だった。そんな彼女がひとりの男の子を追いかけて外国にまで行っちゃって、また会えることが嬉しくてしかたなくて、まるで普通の女の子みたいだ。虚しい結末なのに、不思議といいことばかりが思い浮かぶ。

 

セッちゃん2

 

途中へんな話をしてしまいましたけど、いい作品です。センシティブな世代にたいする視線の鋭さを感じる作風。イラストレーターさんだけあって、どきっとするコマがたくさんあって、空白を読む楽しさがある。すごく現代っぽい漫画なんですけど、触れたら壊れてしまいそうな繊細さは、じっと息を潜めて夜によみひたるにはぴったりです。ぐちゃぐちゃにこわれていく現実と、それでも続いていくくだらない日常と、かけがえない思い出のものがたり。無情なだけではない甘酸っぱい感触。

 




花は泡、そこにいたって会いたいよ (新鋭短歌シリーズ37)

花は泡、そこにいたって会いたいよ (新鋭短歌シリーズ37)

  • 作者:初谷 むい
  • 出版社:書肆侃侃房
  • 発売日: 2018-04-16

 

完全に余談だが大島智子先生が表紙を担当しているこの歌集が最高にエモキツい。ヘビロテしてる。ひとつの作品が2秒で読めるからな。それでいてずっと歌の世界にこころが置き去りにされてしまうのだ。

自分のなかの短歌という概念が完全にぶっ壊されてただ水のように体内に染みてくる言葉言葉and言葉。静かな読書をしたいぼんやりぐんにゃりな午後にぺろりとページをめくると一瞬で感情になる。一瞬で恋をする19歳の女の子になる。冗談はさておき本当に素敵な本で、短歌どころか言葉って日本語ってほんとうに自由が表現が可能なんだなという学びがある一冊。日常のささやかな一瞬を切り取って哲学から宇宙から女心やら自在に飛躍する混沌が楽しい。漫画もいいがこちらもおすすめである。大島智子先生のイラストを目当てに買うとあんまり載ってはないので残念かもしれない。でもほんと表紙がいい。そこにいたって会いたいよ。

 

 

好きな歌です。

ふるえれば夜の裂けめのような月 あなたが特別にしたんだぜんぶ

夜 きみのつまんない話に笑ってる 聖なる窓の埃を見てる

光ってみたり終わってみたり生活は降るようにあるめざましが鳴る

快晴がつくる逆光きみの名を一生覚えている気がするな

とこしえだ 言葉はぼくを響かせて骨をひとかけ花へと変える

言いたくてくしゃみにそれが消えてって夜のみなもに手を振っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浪漫ある大学生活は斯くも遠い・・・!!『江波くんは生きるのがつらい 』

江波くんは生きるのがつらい (1) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

江波くんは生きるのがつらい (1) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

  • 作者:藤田阿登
  • 出版社:芳文社
  • 発売日: 2018-02-09

江波くんは生きるのがつらい (2) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

江波くんは生きるのがつらい (2) (まんがタイムKR フォワードコミックス)

  • 作者:藤田 阿登
  • 出版社:芳文社
  • 発売日: 2018-09-12

2巻を新刊売り場で見かけて買ったら大当たりした。久しぶりにクリーンヒットした新人作家さん。大学を舞台にしたラブコメ作品としてバッチリ面白いし(特に2巻から)さらに個性強めの主人公の空回りっぷりとか、ダメ男なのに周囲を引きつけてしまう天性の魅力を持っちゃってる感じがひたすらに面白い。

個人的に大学を舞台にしたぬるーい漫画がすきだってこともあってハマりましたけど、いやこれラブコメ的にもめちゃくちゃ面白いぞ!!なんで今まで見逃してたんだろ、悔しい。きららフォワードを雑誌を追う習慣がないからか・・・!

http://seiga.nicovideo.jp/comic/32745

ニコニコ静画で試し読みができる。1話も読めるのでぜひぜひ。
というかフォワード本誌からニコニコ静画へ移籍している。せっかく面白いのに、もしかしてこれってピンチなのだろうか・・・わからん。そうだとしたらとてもとても勿体無い・・・!

江波くんと同じく大学は文学部だったってこともあり個人的に共感するところが・・・・・・あるような無いような・・・・・・。大学モノのラブコメって絶対数が少ないという意味でありがたいですし、そのうえこんなキャラもぶっ飛んでて面白い漫画があるとはな。

 

 

とにかく主人公の江波くんのキャラがいいんだ。見ているだけで楽しい。
最初のうちは1話完結形式で、いろんなヒロインたちが登場してそれぞれと絡んでいく。けれど江波くんは文学青年で、小説を書こうとしていて、その題材のために劇的でロマンとセンチメンタルあふれる学校生活を送ろうともがいている。運命に導かれたドラマチックな瞬間を目指している。そのことのこだわりが強すぎて肥大化した自意識に絡め取られまくりなのだ。ようするに、イタい・・・!

 

江波16

 

ドラマチックな人生を演出するためのヒロインを探して入るものの、ちょっとでも出会い方を間違えると「あれは運命なんかじゃなかったんだー!」と発狂して関係を絶とうとしてしまう。
それ以外にも弱点が多すぎる。カラオケが苦手。集団が苦手。いざという行動が意味不明になる。こだわりすぎて小説をまったく書けていない、などなど。

こうして挙げてみると大体やべーやつなんだけど、そういう不器用で狭量で理想化でナルシルトなところが全部彼の魅力でもあり、読者をイラつかせないバランスに保てているのも何気にすごい。ヒロインとのフラグをびみょう~~~に立てながらも自分でバキンとへし折ってヒロイン置き去りに走って逃げてって、「お前なぁ!!」って言いたくなる、それが楽しい。

ひとりで高まって、ひとりで怖気づいて、ひとりで挫折して、ひとりで憤ってる。
もう全部ひとり。彼だけの世界で完結してる。
最初っから最後まで、相手のことなんてお構いなしで失敗していく。

 

江波11

 

それが面白おかしくて、ああコイツ面白いな愛らしいなって思うのに、ふとしたときに自分から距離を撮ろうとする時の彼の表情や言葉だったりがやたら切なくて寂しくて、胸かきむしられてしまうのだ。

 

江波15

 

本当に自分勝手だし相手を見ていない自己憐憫のくだらない真似事なのに、残念なことにわかってしまう・・・こいつのやってることやりたいこと、分かってしまう・・・!!!この共感性・・・!!!

女性に理想を抱くのと同じように、いやそれ以上に自分への理想が強すぎるせいで生きづらさが爆発している。作品タイトルに「生きるのがつらい」は重すぎやしないかと危惧がまずあって、その上で読んでみると生きづらさがギャグ的に消費されているシーンも多々あるので、薄っぺらに感じられてしまう可能性もある。

でもじっと読んでみると、やはり節々に彼の等身大の「生きづらさ」はそこかしこにある。自己実現に苦悩して、みんなができるいろんな物事が下手くそで、鬱になるとか自殺するレベルではないんだけれど、こういうちっぽけな悩みの連続が学校生活には当然のように満ち溢れているんだよなーって、思い出して甘酸っぱくなってしまうのだ。

友達もいないしもちろん彼女だっていない江波くんだけど、しょぼいなりに青春です、間違いなく。

ふざけてるみたいだけど江波くんは真剣に自分の創作へ情熱を燃やしている。そしてゆっくりだけどそれは進んでいく。失敗だらけでも、理想通りじゃなくても、彼は進んで行けているのだ。

 

そしてそんな江波くんを見つめるヒロイン。本作のやべーやつ第2号。
ほとんど江波くんのストーカーみたいなことしちゃってる清澄さん。

 

江波12

 

江波くんのイタさを見抜き(いや見抜くまでもなくダダ漏れだが)、以降ひそかに彼の動向を置い続けている彼女。せっかく美人で引く手あまたのに、なぜか江波くんを追いかけちゃってる。彼女の願いは「江波くんをいじめたい」である。

 

江波13

 

いろんなヒロインが登場するけれど、彼女はちょっと違う立ち位置。江波くんの日常をかき乱すトリックスター的な役割を担う。
江波くんの日常をかき乱すようにストーリーを動かしていくんだけれど、第13話では江波くんの初小説をはじめて読ませてもらえるという絶頂モノの役目をいただくことに成功している。

今後は江波くんの理解者、協力者としてのポジションを負いながらも、ひそかに彼女自信の欲望を追求していく感じだろうか。江波くんをいじってるときの清澄さん、メチャクチャ楽しそうで見てるこっちもにこにこしてしまいますよ・・・!

 

清澄さんの手伝い?もあって文芸サークルに入ることになった江波くん。いろんなヒロインが登場する本作ですが個人的イチオシの娘がこのサークルの宇家さん。

江波14

いっけんクールなのに地味に妄想爆発型のヒロインでして、この第12回のエピソードはアンジャッシュのコントみたいなすれ違いの会話劇がメチャクチャつぼでした。むしろ江波くんと似ている部分がかなりあるような気がする女の子ですね。

でも出てくる女の子みんなかわいい。それでいて、この記事内ではあまり触れなかったけれど、創作へのアツい思いもしっかりと閉じ込められている作品なのです。応援したいなぁ。あとこういう主人公が好きなのはもう趣味で性癖なので、どうしようもないですね。主人公のキャラの濃さが好き嫌い分かれるかもしれないとも思いつつ、コメディとしての出来がなにぶんいいので広くおすすめしたい。

平成の終わりに『最終兵器彼女』の新作描き下ろしを見て泣いた

週刊ビッグコミックスピリッツ 2018年48号(2018年10月29日発売) [雑誌][Kindle版]

週刊ビッグコミックスピリッツ 2018年48号(2018年10月29日発売) [雑誌][Kindle版]

  • 作者:週刊ビッグコミックスピリッツ編集部,のりつけ雅春,丹羽庭,小林有吾,上野直彦,こざき亜衣,石ノ森章太郎,三条陸,佐藤まさき,真鍋昌平,ジョージ朝倉,鍋倉夫,水口尚樹,藤木俊,金城宗幸,にしだけんすけ,吉田戦車,高橋のぼる,高瀬志帆,高尾じんぐ,さだやす,山本英夫,和田竜,吉田史朗,手原和憲,小田原ドラゴン,カレー沢薫,草下シンヤ,本田優貴,ホイチョイ・プロダクションズ,タナミユキ
  • 出版社:小学館
  • 発売日: 2018-10-29

 

あんまり嬉しくて記事を書き出してしまった。

 

 

スピリッツが通算2000号を突破したということで、歴代ヒット作家たちによる同窓会企画が掲載されたのだけど、そのラインナップがアツいということは当然のことながら至極個人的な感動を述べるなら、最終兵器彼女の新作が描かれていることがとてつもなく、ハンパじゃなく、嬉しい。

 

スピリッツ11

 

スピリッツの漫画で印象深いのが「七夕の国」かな。たぶん1番最初に触れたスピリッツの漫画だった。父親が持っていて、トイレの漫画置き場に置いてあったのをこそこそ読んだのを覚えている。小学生の自分には衝撃的なグロさとそれに逆をゆく蛋白なタッチがクセになり、まんまと本棚の「寄生獣」に手を伸ばすきっかけになった。その節はどうもという感じだ。すっかりアフタ購読者になった。七夕の国のオカルトチックというか伝奇モノっぽい雰囲気はほんとに後引いて、いまもかなり影響が残っている気がする。

あとは「ピンポン」ですかね。(読んだ当時の)同年代が描かれているはずなのにメチャクチャ大人びててメチャクチャかっこよくて、もう存在感が卑怯というか、しびれる漫画ですなぁ。アニメも良かった。評判のいい映画は実は見たことがなかったりする。アマゾンプライムにあるしそのうち見たい。

 

懐かしいタイトル(読んだことのないものもとても多かったけれども)が一堂に会するこういう企画はやはり楽しいもので、わけも分からず懐かしい気分になったりするわけです。とめはねとか、クロサギとか世代なので染みますね・・・・・・。

 

・・・・・・で。最終兵器彼女も参加しています。描き下ろしで2頁。

 

いやそこは「いいひと。」じゃないんかいとは感じた。作者の最大のロングラン作品だしドラマ化などもあり一般知名度があるのはこちらだと思ったんですが・・・でもサイカノ好きなので選ばれて嬉しいですマジで。(ドラマでの因縁があるのかと邪推してしまったが)

 

作者の高橋しん先生のツイートで掲載されてると知り
「ほうほう」と手にしてみたわけですが・・・・・・いやこんなの、ビックリするでしょ・・・

 

最終兵器彼女2000

なに普通に最終話の続きから始めてんだよ!!!

 

俺は!!!!そういうのを!!!!いつか出てくれとずっと願い続けてる完全版や文庫版の最後のサプライズ描き下ろし的なので見れたらいいなと思ってたんですよ!!!!!

ここでやるか!ここで!!

最高。ありがとう。ふたりが生きている未来を見ることができて。

冗談じゃなく泣いてる。壊れてしまった世界も、壊れてしまった彼女も。なにも変わらない。救われてなんかない。でもそんなのなんてことないように過ごしているシュウジがの能天気にスピリッツを楽しみにしてる姿とか、言葉じゃなくてもちせの思いが通じている様子が、完全に26歳サラリーマンの乾涸びた涙腺を爆発させている。やめろやめろ。

ナチュラルにシュウジが35歳になってて草生えますよ。連載開始の年からリアルタイムで歳とってたんかい。確かに、その、昔より・・・髪の量・・・が!! あ、でもちせはいつ見てもほんとかわいい。たぶんきっと永遠にかわいいのだ。なんたって最終兵器だもの。歳を取れないのではない、世界がちせにそうあれと、願ったのだ。

 

ガチンコの続編というわけではなく、結構メタいネタもあったりもお祭りムードある描き下ろしでしたけれど、さらっと重要な描写をしてくるあたり油断ならないったらありゃしない。

あんまり書くとクドくなりますけど本当にこの「最終兵器彼女」という作品には思春期をアホかというほど歪められてしまった。2巻の真っ黒いだけの見開きが連続する場面で「漫画にはこんな表現ができるのか」って震えたのが、漫画にのめりこむきっかけのひとつだったかもしれない。泣いて泣いて最終巻で抜いて、とにかく青春をささげてしまったと言える。

いま改めて作品を読むと昔ほどのピュアな目線で見れなくはなっているけれど、この作品が持つ圧倒的な愛おしさとか、絶望感とか、願う人の尊さとか、いまの自分の土台になっているフェチ要素がありすぎる。原点。これが原点なのか俺の。もはやわからなくなってきたけどとにかく大好きだってことは間違いない。

 

そんな偉大すぎる作品の描き下ろしで、あっさりと最終話のその後を見せられてしまった。
反則でしょそんなの・・・。この先どんな未来があるのかと、いや未来なんて存在しえるのかと、どうやったら宇宙と人の恋は共存できるのかと、もう意味不明な思考に陥っていた所で「毎週スピリッツを楽しみにしている35歳になったふたり」の登場である。やってられるか。号泣だよこっちはよ。

 

っていう、たった2頁の描き下ろし漫画で泣いたってだけの話。
「ツイッターでやれ。」

それにしても本当にサイカノは完全版が出ないなぁ。ぼちぼち出てもいい頃合いだと、10年くらい言い続けてますけど、出ません、文庫版も出ません。こないだアニメのBD-BOXは出ましたけど原作はまったくリマスターされません。

子供の頃読んでた漫画が文庫だったり完全版だったりすることがここ2,3年で増えて、そういう歳になってきたのだなぁとしんみり感じますが、ハチクロとサイカノはずっと待ってるのに出ない。頼む~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

アニメ版、評判わるいけど要所要所はきちんと描かれていたし曲は抜群だし俺は好きだよ・・・

 

 

あ、そういえばスピリッツで来週から西炯子先生が連載スタートだとか。楽しみですね。

 

 

 

 

やさしい世界はここにあったんだ。『事情を知らない転校生がグイグイくる。』1巻

 

事情を知らない転校生がグイグイくる。(1) (ガンガンコミックスJOKER)

事情を知らない転校生がグイグイくる。(1) (ガンガンコミックスJOKER)

  • 作者:川村拓
  • 出版社:スクウェア・エニックス
  • 発売日: 2018-10-22

 

やったぜ書籍化。これツイッターで見た時から好きでした。

 

これがバズって連載化、からのコミックス発売です。連載になってどうなるかとも思いましたが、なんともありません。この世界観のまま、なんなら特別なキャラ追加もなく、無邪気でおばかでヒーローな男の子と、死神とクラスから疎まれている少女のあたたかな交流をまるっとたっぷり楽しめる。

これが非常にね、ほっこりする。大変に安らぐ。
やさしい世界って、あるんだなぁ・・・

本当にただただ2人の関係をニヤニヤと眺めているだけの時間が本当に癒やされます。クソみたいな15時間労働かましたあとに読んだりするとふいに涙があふれることだってある。ふだん読む漫画の傾向としてシリアスっぽいのを好みがちなんですけど、ふとこういう邪気のない漫画を読むと、前より増して気持ちがほぐれてくれる。やさしい世界の断片を、きれはしを、残り香を摂取してなんとか生かされていると言ってもいい・・・。

まぁ「邪気が無い」というとヒロインが置かれている環境はどうなのかという所はあるか。でもこの作品って、ヒロインを悲劇的に描きすぎないところがミソだと感じます。暗くなりすぎない。読者を刺激しすぎない。ある意味では都合のいい設定ですけれど、このバランス感覚をある種メタ的に保っているのが、タイトルにも出ているグイグイくる転校生、高田くん。

彼がに周囲も西村さんも翻弄する見事な天然タラシキッズなのが爽快なんですね。

事情を知らない12

こっちもにやけがとまんねぇんだよな。

クラスメイトたちがいろんな言葉やいろんなイタズラでヒロイン西村さんをからかうんですけど、天然かつ根がいいヤツすぎる高田くんがすべてを浄化するので安心して読める。クラスメイトたちの簡単に丸め込まれちゃうお子ちゃまっぷりも、ある程度読み進めると笑えるポイントだったりする。

事情を知らない11

 

これは深読みのしすぎかもしれないけれど、本作はずっとページ縁が黒ベタなんですよね。ちょうど回想シーンみたいな雰囲気がずっと続いていく。

小学校という狭いせまい世界を描いていく作品だからこそ、なんかこの演出が効いてくる。もしかしたらこの物語自体が、未来のだれかが回想したり読み聞かせている『かつての日々』なのかもしれない。そう思うとさらにノスタルジックで、失われた尊さが輝きを帯びていく。

10年後とかに成人式でドチャクソ美人に成長した茜ちゃんが周囲を見返してくんないかな。それで、また引っ越していったはずの高田くんと成人式で再会して始まってくれふたりのストーリー・・・・・・・。恥ずかしがりませんわたくしは。

 

 

まぁさらっとした紹介になりましたけど、さらっと読めてニヤニヤできるいい漫画です。おすすめ。いかにもモブっぽい造形のヒロインがめいっぱいに愛されて幸せにされる物語、絶対に幸せを約束してほしい。

 

 


 

(ついでの話)

最近いろんな所で見かけるツイッター発漫画の単行本化についても少し書いてみる。個人的にはいい傾向だとも思ってるし、一概にいいとも言えないような気もする。

「グイグイくる転校生」とはぜんぜん関係ない話なので適当に流してください。

 

作家さんや雑誌側としても、そもそも知名度ある状態で需要のあるなかで連載をはじめられるのだから大きなメリットだろうな。あと雑誌連載でイマイチ結果を残せなかった悔しい作家さんが、ツイッター漫画でバズってるのを見ると嬉しくなる。ちょっと前に星海社のツイ4がはじまったあたりで「ツイッターで漫画をアップして拡散されよう」というブームがなんとなくできてきたような気がするけれど、高木さんも正直ツイッターでバズりまくった結果の大勝利という部分も強いし、かんぜんに今のブームですよね。普段使ってるSNSツールで、なんかしらんけど面白い漫画がTLに流れてきたぞ、っていう出会いの嬉しさってのが全体的にプラスに働いてるんだろうなーと感じる。自分自身、めっちゃふぁぼる。夜になって見返す。

ただツイッターってその時その瞬間の「あ、いい!」の脊髄反射的なファボやRTが多い気がして、拡散されることで多くの人の目には触れるだろうけれど、作家さんがそれによってメジャーになれるかというのも疑問だったりしますね・・・。

バズる漫画を傾向を見るとやっぱ4頁でまとまってるショートショート的な掌編がおおいのだけれど、それを雑誌で連載化となったときに、物語が動きにくいって所が弱点なのかもしれない。ツイッターで作者アカウントで不定期連載みたいにアップされる漫画のほうが意外と展開が面白かったりして、雑誌連載化する作品だと停滞しがちなような気がする(個人の感想ですが)。

あと個人的にムカつくんですけど、ピクシブとかツイッターでヒットしたタイトルをすぐに書籍化してくるときの一○社とか○川系列のあのおいしいとこだけ持っていこうという感じが。作家的にもせっかくバズった作品が書籍化されて世に出るなら嬉しいことのはずだけれど、「消費されてる感」が絶妙にモニョってしまうんだよなぁ・・・・・・。WEB誌連載ならともかく雑誌でWEB発ネタを雑誌で連載化させて、それでネットから作品を奪っておいて、やってることはWEB時代の焼き直し・・・・・・みたいなクソダサいことになってる作品見ると泣けますよ。編集なにやっとんじゃと。ツイッター漫画を商業化するならツイッターのリンクからワンクリックで読めるような環境でやらないといけない気がするんですけどね。

なんか文句いうのも辛い。こんな時代ですので、漫画のあり方、読まれ方もいろんな選択肢が出てきたってことなので、ズレた考えなのかもしれないですけども。