どうか教えてくれ、あの夜の答えを・・・! 『やれたかも委員会』2巻

4575313483 やれたかも委員会 2巻
吉田 貴司
双葉社 2018-03-28by G-Tools

待ってましたの第2巻。ネットでも追っているんですけど、なんとなくこの作品は紙として、手にできる形で持っていたくなる。

いやはや人気もうなぎのぼりで早くもドラマ化なんかしちゃいましたよ。でもドラマ向きな題材ですよね。個人的には『世にも奇妙な物語』形式で年に2回、2時間スペシャルで再現ドラマを4,5本やってくれるような感じでやってくれないかなと思ってます。

いまさらどんな作品かって説明しないしたぶんタイトルで想像できる通りなので省きますが、1巻より増して胸に迫る、甘酸っぱい「やれたかも」な夜が詰まってますね・・・まぁこういった切なくも虚しいエピソード群を「男ならだれしも」的な論調で語られるのも参るのでやめてほしいんですけど・・・空虚な人生を見つめ直すしかなるなるので・・・ともかく、いい夜がギュッと詰まった、センチメンタルな一冊。

 

第9話は自分探しの旅的なやつでインドを訪れた先でのインターナショナルなやれたかも。一夜だけどころか、国すら違うことで余計に「あのとき、ああ出来ていれば・・・」という後悔が重く遠くなってるのがいいシチュですねぇホント。でもこういうのを読むと、ホントにやれていたらなんもいい話じゃないんだよな。やれなかったけれど、きっとあの娘は心を開いていてくれていたはずなんだ。そんな思い込みかどうかもしれない淡い期待が、美しい思い出になるんだよな。引きずり続けて韓流アイドルおっかけになってたり、ラストの審査員月満子の総評がバッサリすぎて気持ちよかったのもいいオチ。

 

第10話。カラオケにとつぜん乱入してきた女の子とのやれたかも。「え、そんなことある?」っていう現実感のなさと突然放り捨てられるような寂しさあふれるラストの流れも秀逸。淡々とカラオケ店内を描写する1ページに「やれたかも委員会」の魂のようなものを感じる。あとこのエピソードの月満子のコメントが2巻までの全話中イチの切れ味でまた最高なんですよ。その瞬間に、夢中になって掴み取ることが出来ていなかった。ストンと腑に落ちる・・・

 

第11話。映画友達になった女の子とのやれたかも。全然そういう話しもしたことなかった関係でこの夜の選択肢をただしく選ぶことができる勇気とセンスがあったなら、きっとそいつは恋愛以外でも大成できる人間なんだろうな、と感じる。瞬発力、大事。
でもこの2人は「やれたかも」以外という気持ち以外でもつながってるもんな。映画を見たいくつもの時間と、語り合ったいくつもの夜がある。性欲に突き動かされないままに共有した時間がある関係って好きだな。致命的にチャンスを逃した瞬間が明確なのもスッキリできる。いつ間違えたのかも分からないほうがいやだ・・・

 

第12話。会社の後輩とのやれたかも。これはもう完全に許容、承認の話で。ちょっとマニアックな趣味にも引かずにむしろ楽しんでくれちゃったりして、自分の臭い布団をかぶっても「くさいっス へへへ けど悪くないかもです」なんて言ってくたりしたらもう、あまりに自分を許してくれすぎて俺だったらたぶん告白するまでもなく泣いてるわ。でも勢い余って告白してなかったらどうなってたのかなーという感じもあるエピソードだ。駆け引きとはかくも難しい。

やれたかも23

 

第13話。大学の先輩とのやれたかも。あ~~~大学で女の先輩とこんな空気になってみたかった~~~~サークルでスマブラやってアニメ見るしかしてなかった~~~~~・・・・
このエピソードのキモはやれたかもという後悔もあるけれど、あの一夜のせいで自分のチンコにコンプレックスが強くなってる主人公。満足させることができなかった挫折感。そしてどのチンコを彼女が選んだかも知ってしまってる環境も地獄みが強い。

 

第14話。付き合ったばかりの彼女とのやれたかも。やはりこの作品の面白さって、昂ぶった感情がいかに行き場を失うか、なさけない選択肢をとってしまうのか、台無しにする失敗をしてしまうかって所だと思うし、最後で月満子が言うように面白みが少ないと言えば少ないんだよな。初々しくダメージも少ないがゆえに。
ああ、でも、ラブホでニットの上着を脱ぐときにパチパチと静電気が鳴って、まるで祝福を受けているように錯覚するシーンの臨場感は、たまんねーな。

やれたかも21

第15話。久しぶりに女性からのやれたかも。婚約はしているが、それでも好意を寄せてくる年下男性と一度だけデートにでかけた先で・・・というちょっと背徳感のある導入から繰り出される強打の数々。そっと繋がれた手。入籍前の一度きりのお出かけ。遠ざかる太陽の塔。どれもこれもがエモーショナルの火が灯っている。
抱きしめたときの彼の尻ポケットに手を突っ込んだあたりも、体験談だからこそのいいエピソードだなぁ。ぜんぜん必然性がないのに強烈にインパクトを残す描写だ・・・

確かめた形。確かめられなかった勃起。ああ、センチメンタル。

やれたかも22

第16話。合コンで知り合った女の子とのやれたかも。ドエモい。これが隠れ家レストラン・・・。実質これ、主人公と先輩とのBLでもあるでしょ。恵比寿BLですこれは。そしてそこでのデートの成功っぷりよ。なんせこんな甘い瞳で見つめてくるのである。こんなの、やれるでしょ。と思いきややれないのがこの作品の常。

やれたかも24

「好き」と言ってから行為に及ぼうとするのがせめてもの誠実さと考えて男たちは2人きりの夜に告白するんだけれど、この作品よむとだいたい撃沈してるんだよな。怖。
恋人同士でないのに一緒に寝てしまうような非日常感のなかで、誠実であろうとする態度はかえって夢のような有耶無耶な気持ちをいったん破壊してしまうのかもしれない。うまくいかないんだなぁ・・・
けれど語られる、数年後の物語。やれなかった一夜をふたりともが温めて、そして再開したとき何が語られるか。どうか、あの夜の答えを教えてくれと・・・。

個人的にはこのアフターがあまりにも心に刺さりすぎて、布団でのたうち回りましたよ・・・短いページ数のなかできっちりヒロインの人間性とかも描写できててひたすらに完成度の高い第16話。最高傑作と言っても良いのでは?『じゃりボーイ ごっつええの持っとるやんけ』!!

 

 

 

番外編はホリエモンとのコラボやれたかも。作中でも触れられているけれど、行き場のないリビドーを暴発させた、ホリエモンらしからぬいいやれたかもでしたね。実際のところやれるわけない流れではあるけれど。

 

 

各話感想というかたちで書いてみましたけれど、SNSでタイムラインに流れてきて「おっ」と読み出すのがこの作品らしい所ではある。でも単行本で一気に読むとほんと甘酸っぱい気持ちで心臓が押しつぶされそうになるのでオススメですね。あと装丁もいい。数あるシーンでこの場面をチョイスで表紙に採用するセンス、バツグンじゃん。

 

 

まごついた夜。言えなかった言葉。触れられなかった君。
すべての『やれなかった』は美しい記憶となって、死ぬまで自分の根っこに眠り続けるものなのかもしれない。それでもあの一夜を誰かと共有することができたなら、こんなにもいい漫画が出来てしまうんだな。

 

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ぼくらの空洞が響鳴する。『月曜日の友達』

4091896219 月曜日の友達 1 (ビッグコミックス)
阿部 共実
小学館 2017-08-30by G-Tools
4091898009 月曜日の友達 2 (ビッグコミックス)
阿部 共実
小学館 2018-02-23by G-Tools

月曜日の友達2巻を読みました。

雑誌でも読んでましたが単行本として読むと、作品としての完成度の高さにあらためて腰を抜かす。

しかし完成度の高さを語りたいのではなく。いやもちろん高いんだけれども。

なにがすごいかって、こんなに色んな人が絶賛している中でも『これは自分だけの物語だ』と信じられてしまいそうな、魂に染み込むほどの共鳴があるということだ。共感。シンパシー。「俺が1番この作品をわかる」とイタいことまで考えてしまう。20代も半ばとなった自分にしてこんなにも入れ込むのだからドストライクの思春期にこんな作品にブチあたっていたらと思うと恐怖すらある。惜しい。もっともっと心の柔らかなときに触れたかった。そしたらもっとエグられていたはずだ、畜生。十分すぎるほどに打ちのめされた作品だけど、そんな想いさえ湧き上がってくる。

むかーし10代の頃、「フリクリは20歳になるまでに観ろ」と助言をもらったことに今でも感謝しているけれど、俺はこの作品についても同じようなことを思う。むしろ阿部共実作品を10代で読んでいてほしいし、阿部共実作品の中でも比較的、入門として手に取りやすい作品だと思う。

別にわかりやすいトラウマ漫画ってわけではない。それならもっと、この作者の過去作に救いようのないドギツい作品だってかなりあるわけだし。阿部共実先生というストーリーテラーからすると、この作品はかなりシンプルな部類だと思う。

まぁひとまず第一話を読んでみてほしい。
http://yawaspi.com/tomodachi/

削ぎ落とされたモノトーンの世界。そこに息づく登場人物たちの、チクリと心臓を刺す心の痛み。身に覚えがある。そしてたぶん多くの人も通過した地点だと信じたい。この劣等感。疎外感。満ち足りない、なにか。夏休みをあけたら急にみんな大人びて見える恐怖。ふと気づけば自分だけ成長がない。進歩がない。一緒のペースで生きることができてない。1年間も同じクラスに同い年の数十人が押し込まれているのだ。いくらでも比較対象がいてしまうその環境で、たったひとつの傷も負わずに生き残ることができる人間が果たしてどれほどいるのか。

月曜日の友達2

私はどう生きたいのだろう。どうすれば大人になれるのだろう。でもどうか君だけは大人にならないで。私を置いていかないで。

とにかく心理描写と、それを突きつける言葉の切れ味がすごすぎる。
表現や描写におけるチャレンジが、個性的かつリアルな思春期の物語に完全に寄り添ってる。描かれる歓びやかなしみのひとつひとつを、感じたことのない熱量でこちらに投げかけてくる。恐ろしい漫画だ……。

主人公である少女・水谷も、それから月曜日の夜に約束を交わす少年・月野も。
この作品に登場する中学生たちは本当に生身の中学生のままそこにいる。
寂しさも悲しみも、それを分かち合える唯一無二の友達と出会えた歓びも、彼らは清らかな心のままに感じ取っていく。そしてときに打ちひしがれ、なぜだか素直になれず、後悔の連鎖を積み上げて、いくつかの夜を震えながら過ごす。掛け替えのないものと知りながら乱暴に触れてしまいたくなる。みじめな自分を見つけるたびに、誰かに会いたくなる。こんなに美しいまま、人間らしいままでいる季節がほかにあるか。中学生は最高だ。

(14ソウル。この漫画の彼らは12歳から13歳にかけてだけど)

 

水谷の疎外感も、月野の孤独も、なにかしら自分にフィードバックされるリアルな痛みがあって正直こたえる。コミックの紙になんかヤバイ薬品でも染み込んでるんじゃないかと疑うレベルで精神を揺さぶってくる。否が応にも息苦しくなって、そのたびの彼らが愛おしくて仕方なくなるのだ。

滔々とした語り口の水谷のモノローグはひとつひとつにその時の彼女の切なさが見事に表現されてて全部覚えたくなるくらいだし。やはり絵も力強くて印象的なコマがとても多い。バキッとコントラストの効いた画面づくりがひたすらにカッコよく、そこに載せられる言葉も温度感さまざまに心臓を圧迫してくる。そして思っていた以上のスピードで過ぎ去っていく日々と季節に焦りと甘酸っぱさを覚える・・・・・・。
好きなところだらけ。好きな所しかない。ラストシーンはもう「耳をすませば」並の胸キュンセリフが飛び出したりもする。小難しいことばっかり考えいた彼らの心が、互いのすぐそばまで1番近づいた瞬間。そこに発せられる言葉の、あまりの真っ直ぐさでもう泣けてしまうよ。こんな素直な言葉で気持ちを伝えあえてしまう夜。きっと一生ものに違いない。
作中の根本にあるどこか冷静なままの視線や乾いた感覚に支配されたまま読み進めた読者も、展開通りに空中にうちあげられて剥き身のままに彼らの約束や、ささやかな願いの清らかさにすっかり撃ち抜かれているのだ。


この作品を決定的に魅力的にしているのは「音」だと思う。

漫画表現で当たり前につかわれるオノマトペを排除している。クッキリとしたモノトーン調で描かれる世界の異物感が、音のない世界にやけに合っているんだよな。漫画としても独特のテンポが生まれて作品の味みたいなものになってる。

そんな無音の空間に響く言葉たち。キャラクターの台詞や、水谷の印象的なモノローグ。ひどく静かな洞窟の中、雫が1つ水面に落ちただけの音も聞こえてくるような、シンと耳をすませたくなる漫画なのだ。言葉に重きをおいた作品だからこその演出とも感じられる。漫画の中の風景に、自分が過ごした風景の音を重ね合わてしまうと没入感が増すのかもしれない。

月曜日の友達1

そして「音」でつなげてしまうなら。

みじめで満ち足りない、出来損ないのぼくらや彼らの中にはぽっかりと空白がある。空洞がある。日々の生きづらさが募るほどに空洞はどんどんと深さを増していく。
自らの中に空いてしまったそこに彼らは閉じ込められ、ただただ自己嫌悪ばかりが反響し、心をくじけさせていく。音のない牢獄。からっぽなだけの自分だ。

しかしだからこそ、なにか小さな一欠片がそこに投げ込まれたとき。
例えば同じ寂しさを共有する人に出会えたとき。
そして誰かの特別になれてしまうような、途方もない奇跡があったなら。

その空洞は共鳴し反響し、大きな音を奏でるのかもしれない。となりの誰かの空洞と、響き合える瞬間があるのかもしれない。価値観全部を変えられるような。寂しさや悲しみ全部を塗り替えられるような。まるで魔法のように。

それこそが、音のない世界でたしかに響く、欠けた彼らにしか聞こえない音。
彼らにしか使えない、秘密の魔法だ。

 

 

 

そんな魔法を手に入れた夜が一生モノの輝きを放つラストシーン。
惨めでも欠けていても立派でなくても、自分が空っぽだと思いこんでいても、自分を認めることなんて出来なくても、それでも誰かの特別になりたいと願う心はどんなに美しいか。
こんなに熱いものを見せられてしまったら、この月曜日の夜に魂ごと吸い込まれて、しばらく戻ってこれそうにない。

 

 

amazarashiが歌うこのイメージソングも完璧だ。ここまで読んで、こいつなに言ってんだか訳わかんねぇなってなった人もこれだけ見て帰ってくれよな。

 

 

 

この弾丸で誰を殺そう?『世界は寒い』1巻

 

B07B8PSS8W 世界は寒い(1) (FEEL COMICS swing)
高野雀
祥伝社 2018-03-08by G-Tools

高野雀先生の最新作は繊細な心情を紡ぎあげるポエム漫画。つまりはこれまで通り!しかし新基軸なのは「もし誰かを殺せるような力を手にしてしまったら?」というはっきりとしたテーマと軸があることで、過去作とは違った魅力のストーリーが展開されていきます。

程度に差こそあれ、みんな一様にストレスある日常を送っている女子高生たち。

不満はあってもオオゴトにしようなんて気はない。女子高生は空気を読まなくっちゃ生きていけない。友達同士でグチりあって、悶々としながらも学校いってバイトしてスマホで時間を潰し、そして日々は消費されていく。
そんな抑え込まれたフラストレーションが。日々の憂鬱が。ある日変貌する。

バイト先に置き去りにされた謎の紙袋。その中には弾丸の込められた本物の拳銃。
主人公である6人の少女たちは、本当に何気なく、凶悪な武器を手に入れてしまう。

ムカつくあいつを。
殺してやりらい憎いアイツを。
見返してやりたい、彼奴を。

もしかしたらあっさりとこの世から消してしまえる。
そんなとびきりの魔法を手に入れてしまったのだ。

勇気さえあれば。
もしかしたらこの先の人生すべてをダメにしてしまう、破滅の覚悟があれば。

個々のキャラクターが置かれている環境、そこに渦巻くストレス、価値観、そして選択。6人いればそれぞれの目線からまったく違った物語が見えてくる。
オムニバス形式でストーリーは進み、少女と女性のはざまで揺れる年代だからこその青臭く生々しい本音が吐き出されていく。この部分はこれまでの著者さんの作品と共通ですが、拳銃はどこからやってきたのかいうメインストーリーも進行して、サスペンス風味もあったり。
このバランスがいいですよね。作者の個性が活きていて、しかもキャッチー。

『殺人願望』と呼べるほどはっきりしてなくたって、漠然とした「死ね」をいくつも抱えてる少女たちの鬱屈エブリデイ。俺はこういうかわいい退廃が大好きなんです。


前連載作「13月のゆうれい」はフィーヤンらしいといえばらしい、お仕事×恋愛のヒューマンドラマに、ジェンダー的要素も含んだ内容でした。これも読みごたえのあるいい中編作品でしたが
今作はもう高野雀節が全開になってるなって感じ。性癖ダダ漏れ。激エモポエムも炸裂しまくり脳みそスパーキン待ったなし。

幸福か/不幸かの線引みたいなのも含めて、彼女たち女子高生の”生態”を垣間見れるというのが、ゲスなのかもしれないけれど楽しみのポイント。なかなか自分の中にはない感覚と言葉で彩られているポエム世界、そしてそれが不快ではなく、未知に触れる楽しさみたいなものを純粋に感じられるのだ。

同じクラスにいてなんなら1メートル隣に座っていたってまったく話もできなかったあの遠い存在の、内側をすこし知ることができて、当時の自分の思い出をすこしだけ慰めることができるのだ。そういう気持ち悪い読み方をする読者としてはあんまりね、フィーヤン読者様のお目に触れない所でコソコソと楽しまないといけないとは思います。
まるで別の惑星のことを教えてもらってるような感じでとても楽しいんですよ。
そしてなんかウジウジ悩んでばっかだなって所を見て、なんか、安心する。彼女たちは宇宙人なんかじゃなく。同じ地球人で、同じ年齢の同じ種族で、同じようなことを考えて悶々としていたのだな。

彼女たちが直面する現実ってのは、どこにでも有り触れているようで、でも1つとして同じシチュエーションも感情もありはしない。いつだって「なんで私が」「私だけが」っていう自分本位のめちゃくちゃにエゴな感情に支配されて、それこそが思春期なのだろう。

そういう自己憐憫のような感情も間違いなく大切でそしてリアルで、その渦中にある彼女たちの精神世界はもはや苛烈の一言。いつだって爆発寸前・決壊ギリギリで、「いますぐムカつくやつ殺せちゃうよ」って神様がチャンスをくれたなら、なんかもうワクワクしちゃって日常だってキラッキラ輝いたりするんだ。

銃弾をお守りのように持ち歩く少女がいて、彼女のエピソードがとてもいい。その娘は無神経な毒親にストレスを抱いているけれど、かといってその親に殺意を向けるような気はなくて。

世界は寒い1

そりゃ、そういう子もいるはずなんだよな。

作中で言われていることだけれど、わかりやすいドラマ性のある不幸や、明確に殺したい相手がいる場合のほうがむしろ気は楽なのかもしれない。この障害さえ取り除けばわたしは開放されるのだと、そう信じることができれば。たった1発の弾丸で壊せる世界だと思えば、慰みにもなるだろう。

でもそんなシンプルに行かない場合もきっと多いのだ。正体不明の閉塞感だったり、それこそ自分自信のなかにすべての原因がある場合、彼女たちにとってその手に握られた銃弾は、いったいどんな意味を持つのだろう。
もっと自信を持つことが出来たなら…もっと自分だけで自分を救ってあげられたなら…
空虚に支配された1人の世界は、凍えるほどに寒いに違いない。自己嫌悪の夜に終わりは無い。
上の画像のように、各話の扉絵では主人公がいろんなポーズで銃を構えているんだけど、そのキャラクターの特徴がしっかりと現れているのも上手いですね。どこを向けているのか。その表情は。ひとりひとりのスタンスが印象的に描かれていく。なんなら、1人はむしろ銃を向けられてたりする。注がれている敵意や悪意の象徴か。

 

 

作中にちりばめられた言葉は刃物のようにこちらを突き刺す。言葉を丁寧に紡ごうという意思をめちゃくちゃはっきりと感じられて、読んでいてなんとなく背筋が伸びる。

そしてこんなに負の感情に満ちているのに、読んでいてどんよりと暗くならないのもすごい話だ。それは彼女たち同様に読者もハイになるからなんだろう。非日常に飛び出してしまった彼女たちの選択に、ワクワクして仕方ないのだから。

誰を殺そうか?
というより、誰かを殺せるほど、彼女たちは壊れてしまえるのか?
誰を殺そうかなって想像だけで元気が湧いてきていつもより毎日が楽しくなるのなら、そこでとどめておくのが一番平和なのだけれど。果たして誰が一番、壊れちゃってるのか。
ムカつく誰かに銃弾を!そんな妄想はきっと今の悲しい自分を救ってくれる。同時に、巣食われることもあるだろうけれど。

 

 

 

よしッ!俺もその気になったらその場で眼前のムカつく顧客をぶんなぐって黙らせられるように筋トレを始めたい気持ちになってきたぞ!力こそパワー!

 

煙とたゆたう黒髪美人が最高という真理。『シガレット&チェリー』1巻

このマンガの「先輩」が久しぶりにグッとくるナイスな先輩ヒロインだったので思わず書き出してしまいましたが・・・「記事にするには薄味だしちょっと寝かしておこうか」という逃げを使わずに軽率に薄味な更新をしていくぞ!

4253239315 シガレット&チェリー(1)(チャンピオンREDコミックス)
河上 だいしろう
秋田書店 2018-03-19by G-Tools

(薄味なのはこの記事なのであって作品ではない)

表紙がメチャクチャにかっこよくてそれで購入した作品。思春期にブラックラグーンをキメた人間は根本的にタバコを吸う女性になんかしら憧れがある(諸説ある)。スクエニから出たシガレットアンソロジーシリーズも好きだった。タバコキスは必修科目ですからね、現実ではともかく、二次元的には非常に効果的なアイテムだと思いますよ。秘密めいていて、どこか凶暴な本性があるような錯覚に陥る。誰かの影響でタバコを始めたのかもしれない。昔、片思いした先輩に憧れてはじめたとかそういうドラマがあってもいいし、もしかしたら元カレかもしれない。どっちにしたって美味しい。男と縁が切れた後も染み付いた生活習慣をずっと続けてしまう女性っていいよね・・・女性がタバコを吸い始めるに至るには、男とはすこし違うプロセスがあるように勘ぐってしまうのが本当にごめんなさいって感じだ。

大学生活感はそれほどだが、キャンパスライフものである本作。
大学デビューした田舎の金髪ヤンキーの後輩くん(ただしチキンで童貞)。
大学院生であること以外なにも分からない、いつも喫煙所でタバコを吸っている謎めいた先輩。
先輩のバイト先の後輩であるバイトちゃん。
現状、この3人しか出てこないミニマルな物語で、WEB連載らしくテンポいい1話完結ショートラブコメという具合。

だいたいいつも後輩くんが先輩の前でカッコつけようとするも失敗する・・・っていうだけ!それだけなんだけど、それだけで良くないですか!?俺はなんどだって先輩に浅はかな自分を見透かされたいし、あわよくばそれを許容され、笑ってもらいたいよ。

シガレット1

はあ~~~~メガネもクソ似合う~~~~~~

艷やかな黒髪とクールな表情、王道ですけどミステリアスな美人というキャラクターデザインにこれまんまとハマるのである。話していると意外とフランク。だけど過去を詮索するのはNG.

そんな彼女がかすかに垣間見せる心のスキだったり、リラックスした表情がたまらなく嬉しくなってくるんですよ。少しずつ少しずつ先輩が心を開いてくれていく様子が・・・・・・。
勇気ふりしぼって花火に誘ったら「最寄り駅集合でいい?」なんて、約束をしてくれた先輩に、俺は心からガッツポーズ。

シガレ2

これまた、ね。
くわえタバコと浴衣と、ちょっと冷めた視線の素敵すぎるコラボレーション。
きまぐれなのか、それとも。後輩くんの誘いにのってくれた先輩。
女心とたゆたう煙。

主人公のキャラも個人的には好きですね。
最初はチャラいだけ・イタいだけの主人公という感じだったんですけれど、どんどんと先輩に本気になっていく。本気になった分だけ、自分をごまかしては立ち向かっていけない相手だと分かって、不器用ながら果敢にアタックしていく。その努力もから回ってしまうんだけども。でも先輩はそんな空回りの、葛藤と努力をきちんと見抜いている。徹底的に身分が下な後輩くんだからこそ先輩との関係もどこか心地よい。

あと、作画もいいですねぇ。コメディらしい勢いの良さもあるのに、先輩の魅力はしっとりと湿り気を含んでいるようで見ていてゾクゾクします。それでいて強い意思とアンニュイな感覚が宿る表情・・・・・・・・・イイ。

過去作「オトノバ」はちらっとだけ読んだことはありますが、その頃より格段に絵の魅力がレベルアップしている印象。というかオトノバもしっかり読んでおかないといけないなぁ。

1巻クライマックスでいきなりシリアスに突入して、どうなるんだよこれ!!とそわそわすること請け負い。でも安心してください。チャンピオンクロスで今なら1巻の続きからすぐ!無料で読める!ナイス!!

まぁそう長く続くことはないんじゃないかと感じる構成なのが残念な反面、しっかりまとめていって欲しいなと思う良作。あっさりと読めちゃうんだけど、意外なほど後引く面白さと先輩の魅惑的な存在感。

シガレ3

ほォら、良い女。

ヒマそうに見えて、けっこうイロイロ激動です。『凪のお暇』1~3巻

凪のお暇 1 (A.L.C. DX) 凪のお暇 1 (A.L.C. DX)
コナリミサト秋田書店 2017-06-16
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コナリミサト先生の「凪のお暇」。セールやってたので電書で今でてる3巻までを購入しました。
マンガ大賞2018では第3位を獲得。ブレイクしてきている作品ですね。別にだから読んだほうがいいよなんて言うつもりは無いですけども。エレガンスイヴ掲載作って自分のアンテナになかなか自然とはひっかかってこないのが辛い所。

マンガ大賞ではだいたい読んだことのある作品がノミネートされていた中で唯一まったくノーマークだった作品で(個人的に「我らコンタクティ」を応援していたのですが)、しかもフタあけてみればあのメンツで第3位と大健闘じゃないですか。それでタイトルしか知らなかったのも恥ずかしかったので、読んでみたわけです。

ツイッターでもちょくちょくバズってたのか、画像が出回りまくってたんで断片的には読んでたんですけど。

んで、なるほどこれは面白い・・・!!サクサクよめてきっちりエンタメ。
コメディとして笑って楽しめる部分がまずあって読みやすいんですけど、それだけではなく。するどい人間観察から描かれる、社会の隅っこに生きている人々の毒や生きづらさ、そして日常にあるふっとリラックスできてしまう、あたたかな瞬間のバランスが絶妙。
心がゆる~~~っとなってる時に、背筋がヒヤリとする違和感や人の悪意が差し込まれる。思わぬ切れ味にページをめくるペースもあがるあがる。そして頑張ってる人が誰かを見返せるような、スカッとするクライマックスが気持ちいい構成が繰り返されていく。

そして主人公がどんどんと新しい自分を見つけていく成長と転落の様子が魅力。
空気ばっかりを読んで、読み過ぎたら過呼吸になって会社からリタイヤ。
1巻表紙のロングヘアがつやつやトゥルンっトゥルンの女子アナ風美人が・・・・・・

凪のお暇1

劇的ビフォーアフター。というかこれが地毛。そしてこの幸せそうなことよ。
ありのままに生きよう、窮屈に自分の心を押し殺してきたけどそれはもうムリだと、自分を少しずつ開放していく凪のスローライフ。
知らない街。なにもない部屋。のこり少ない残高・・・そして、たっぷりありすぎる時間!

人間関係の悩みが尽きない灰色のOL生活も今はむかし。モラハラ・パワハラ全開の彼氏ともおさらば。今大事なのは、クーラーすらないこの部屋で夏をどう乗り切るかだ。
節約大好きな彼女は、日々の楽しみや幸せもいっこいっこが小さくてかわいらしいのです。

ところが本人はスローで気兼ねのないまったりライフでいきたいのに、こういう性格だからか巻き込まれやすいし、悩みやすい。加えて金輪際おさらばかと思っていたモラハラ彼氏が実はかなりの依存体質ではるばる追っかけてくる。
この元カレくんがまーーーーーーーしょーーーーーもないヤツなんです。
営業成績バツグンで会社でも注目度の高い彼は、裏の顔は高圧的。簡単に凪の心を踏みにじってくる。とんでもないクソ野郎じゃねぇか。捨てて正解だわ。

と思いきや

凪のお暇2

まさかの凪にガン惚れ。捨てられてクヨクヨしっぱなしの超女々しい依存体質男でした。
営業成績もいいということは人間関係の些細なささくれだったり心の機微にだって、反応できる素質があるはずなのです。それなのに凪に対する彼の態度があまりにもモラハラチックなのは、ひとえに彼の精神年齢が小学生並みだから説。好きな子ほどいじめたくなるっていうね・・・。不憫に思えてくるけど、それでもやっぱこいつを応援する気にはまだなれないなぁ。でも正直この作品1番の萌キャラはこいつだよ。

しかももうひとり、彼女の悩ますヤツがいる。隣に住んでいるウェイでパーリーなピーポーのゴンさんだ。こいつもなかなかの曲者である。なにせ心が広くてやさしくて、クラブなんていう大人っぽい未知の世界の住人で、ゆるい時間を生きるのが上手で、そして鬼かというほどセックスが上手い・・・!28歳のうぶな凪ちゃんには刺激が強すぎる凶悪犯だ。

かと言ってモラハラ彼氏とうまくいくのも今の所ではなんかモヤッとくる。
恋愛エピソードはほどほどにして、凪ちゃんがきっちりと自立できる女性になるまでのスローライフをもっと見ていたのに・・・作者直々にクズと言われちゃうようなダメンズに板挟み。
はやく凪ちゃんに本当のお暇をあげてくれ。

 


まったりと始まる物語ですが徐々にストーリーにうねりがましていくのも大きな魅力。
その中で、わかりやすいカタルシスではないけれど、しんみりとスカッとさせられる、爽やかな展開も持ち味ですよね。

知らず知らずのうちに、人は人を評価して区別していく。
この人は自分とは違うな、とか。あの人よりすごいな、とか。
もっとエグいとこいけば自分よりショボい人生歩んでる人を見て安心したり、相手の男と元カレの年収くらべて下に見たり、まぁ人間なんてそんなもんでしょう。誰かに見られることで、見られていることを意識することで自分を確立する。空気を読む。

でもそうできない人も、あえてそうしない人もいる。

凪のお暇3

この作品に出てくる人って、精一杯いきていても誰かから陰口を叩かれたり、足元をすくわれたり、うまく行きてはいけない人々がちらほらといる。
時に容赦なくズタボロにされる姿に目を背けたくなるけれど、この作品はやさしくて、しっかりと気持ちを持ち上げてくれる。

尖った部分を持ったキャラクターがいろいろと出てきますけれども、凪の包容力のおかげなのか(彼女はたまに拒否するけれど、それでも)この作品においてそれら個性のぶつかり合いが間違いなく素晴らしい化学反応を起こしていて、見逃せない人間関係を構築していく。決してハデな作品でもないのに引き込まれるのは、人間の不安定さやアンバランスであるがゆえの魅力をうまく描いているからなんだろうな。

そのうちサクッと実写ドラマとかになりそうな予感がありますね。
主人公の凪の好感度がとてもたかい(おっぱいもおおきい)ので、彼女をとても応援したくなりますね。それにしてもダブルクズとどう向き合っていくのか。元カレくんがもう少しふだんの言動をきちんとできていればなあ。もったいねえなぁ。

私たちは 違う世界を 同じ速度で走る 『おとなとこども、あなたとわたし。』3巻

おとなとこども、あなたとわたし。 (3) (it COMICS) おとなとこども、あなたとわたし。 (3) (it COMICS)
糸 なつみKADOKAWA 2017-10-16
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前回に引き続き今更かよって更新ですけども、新刊が出てたの気づいてなかった、とても悲しい。1巻2巻が同時発売した時にぶっ刺さったシリーズの第3巻。これにて完結。

2017年上半期 面白かった新作コミックス12作

前回こちらの記事でも紹介しました。
あと今だと電子版1巻がキンドルで無料になってるので読みやすくていいですね。(2017年3月29日までみたいです)
おとなとこども、あなたとわたし。(1) 【電子限定特典付き】【期間限定 無料お試し版】 (it COMICS)

テーマは「年の差」。
3つのストーリーが1冊に1話ずつ収録されていくオムニバスで、3巻ではそれぞれが切なさ染み渡る素晴らしいエンディングを迎えていく。
個人的にどの物語も甲乙つけがたいくらいに良い。同じ年の差というテーマでも、どういう関係性なのか、年齢はどれだけ離れているのか、性別は、そこに宿る想いは・・・どれも現実のどこかにありそうなリアルな感触。それでいて非常に魅せられるストーリーテリング。

絵のタッチもねぇ、俺は大好き。レディース系なんですけどスッキリとして見やすく、独白がとにかく活きるポエミーな画面づくりが最高です。言葉で伝えたい部分と、行間を読ませようという叙情的な描写のコンボ技で見事にノックアウト。

ざっくりと個別に感想を書いていきます。最終巻なのでネタバレを含むので注意。


『箱の中』 男女/幼馴染/29歳と22歳の7歳差

少女漫画のような設定から落下していく、自己嫌悪で壊れていく男の物語。
未成年に手を出して家族を崩壊させた父親。その血を継いでいることに、そして幼い少女に惹かれる己に絶望し・・・・・・自ら離別を選んだ彼の、その先の話。

育ちゃんが健気に待ち続けてくれて嬉しい。ほんとうにいい娘であり続けたことが救い。主人公はもう自分から破滅に向かっていってしまう人間なので、こういうなんでも受け止めてくれそうな女性の存在はクスリでもあり毒にもなりそうだよなーとも思う。大丈夫かな、また再発しない? でもそういう不安も含めての、また歩みだした2人の結論なのだから読後感はいいですね・・・うん・・・育ちゃんが報われてよかった・・・

自分を自由にさせるために、必要な時間はあまりに多く、大切だった言葉はあまりに簡単で。
そしてそれは大切な女性から与えてもらうものではなく、自分でたどり着かなければならないというのが構造としてロマンチックだなぁと思う。君ともう一度向き合うための、残酷な日々の空白だ。向き合うための禊の儀式。

クライマックスの「あなたが私の中にいたことは変わりない」であっやべーーーこのまま同じ空につながってるENDか!?と焦ったけどきっちりラストで回収してもらえてドキドキしながら読めました。「どこ行こうねぇ、のんちゃん」と語りかける22歳になった育ちゃんの、数年ぶりの再会シーンとは思えない平熱感がたまらないですよ。待ち続けていたのに、あんなに不安にかられていたのに。そんなのどこかに吹き飛んだみたいだ。


『1枚の絵』 男男/亡くなった女性の旦那と講師/77歳と32歳の45歳差

疑似家族ものという風にも捉えられると思う。
亡くなった女性を経てつながった2人の男。へんくつな爺さんと、孤独な青年。
似たもの同士だが年の離れた2人は、生前の女性が残した絵や言葉や思い出を頼りに生きていて、2人ともが不器用なもんだから、見てて面白い。

ところが32歳の青年・蒲田が交通事故にあったことをキッカケに、徐々に縮まりつつあった距離がまた開き出す、ってところからが3巻の話。

死者をどう受け入れるか、かけがえないのない人の不在をどう飲み込めばいいのか。
このシリーズの主役の2人は「死」を共有することでつながった。それによる根本的な切なさがこのシリーズの魅力でした。ありふれていて、当たり前の死という恐怖。
それに打ちのめされながらも少しずつ変わっていく人々。じいさんがだんだんとかわいく見えてくるのは漫画マジックですね。蒲田の過去回想シーンでいろいろと謎が解けたような感覚。マザコンをこじらせた原因はそういうことなんだな。置いてきぼりにされるという幼少期の圧倒的な寂しさ、疎外感がきっちりと確かめられる分、物語の高揚感もグッと上がる。

そしてちかちゃんは屈託なくていい娘だ・・・偏屈な男どもにはこの素直さを少しでも見習うんだぞ。先生とちかちゃんの関係性もひそかにお気に入り。メインとはなっていないけれどここの先生と生徒の関係もいい「年の差」です。


『ランナーズ』 女女/元同僚/30歳と57歳の27歳差

若作りな美魔女さんも今は昔。菜々子さんも57歳になって落ち着いて、あの職場に努め続けている。エリは退職・結婚・出産を経てもう菜々子さんとの接点はない。

5年の月日が立ち、あらゆる意味で遠くなってしまった2人。けれど2人ともが、あの夜の突然の別れを、いまもはっきりと思い出せる。それだけ無念が残っている。あそこがターニングポイントだったんだ。

おとなとこども 3-1

2シリーズ中もっとも女性誌らしい要素を感じると言うか、女性がどのように生きるかという人生観的な描写も多くて1番メッセージ性が強い。そして個人的にも1番ぐっときました。

間違いなく大切だと思っていた時間だったのに、それを壊してしまったのは私だったのか、あなだっただろうか。それでも「あの人とは合わなかった」と切り捨てて行きていく自分がなんだか悔しい。諦めてしまったは、あなたもわたしもきっと同じだ。

あなたとわたし3-2

すれ違った過去があり、苦悩する今があり、そしてもう一度、日常が交差する。
・・・・・・いやもう、「こうなってくれ!」と願ったような爽やかなラストシーンに思わず拳を握ってしまいますよ。でも決して明るいだけのエンディングではない。

年相応に人生を積み重ねて、幸せだけを信じられるような日々は過ぎ去った。年月は肉体に、顔のしわに、くたびれた髪に刻み込まれる。
それでも美しいと思えるのは、彼女たちが生きる世界がどんなに美しくないかを知っているからだ。自分の心にだって醜さはどうしようもなく巣食っている。けれどやっぱり、覚悟をきめてもう一度誰かと向き合おうとした彼女たちの思いの結実は、ただただ眩しいのです。

女性ならではと言うか、人として当たり前のネガティブな感情は当然あって、それは否定しない。でも引っくるめて自分の気持ちをポジティブに引き上げてくれる、いい話だなぁ。


そんな感じの作品でした。全3巻、集めやすいしオススメですね。

こういう構成にするのなら、1冊で1シリーズが完結するように収録してほしかったな・・とも思いますが、連載の性質上仕方ないかな。どこかで各主人公たちがほんのすこしクロスオーバーするような番外編とかも見たかったかも。

でもあえて言えばというだけで、しっかりとテーマを持って各エピソードが完結していく良質なオムニバス作品集でした。

作者の糸なつみ先生は現在新作を連載中。
http://comic-it.jp/lineup/pachinko_a/?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

こっちも期待大。

光の行方はその彼方 『恋は光』6巻

 

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恋は光、その最終巻。ようやく決心ついて読み終えた。
というのも俺と同じキャラクタを応援してた人が発売直後にショックを受けているようなツイートをしているのを目撃してしまい、読む前からテンションが落ちてしまうマヌケな事態に。
とは言えいつまでも積読わけも行かず、勝手に失恋したような気分もようやく抜けたこの頃、ようやく読み終えた次第。

なぜ秋★枝先生を信じることが出来なかったのか?という反省しかない。

良い、漫画だったな。
なにを恐れていたのか。北代という素晴らしい女の子の晴れ舞台を恐れて逃げた自分が恥ずかしくて嫌になりますよ。
こんなにもまっすぐに「恋とはなんだろう」という問いを見つめ、慎重に言葉を探し続けた本作だからこそ、たどり着けた境地に感じる。恋愛漫画において非常に綱渡りな結論を出したとしても、なんかこう、腑に落ちる感覚があるというか。
展開を台本として読んていたならきっと不満があったろうけれど
きちんと本心からの言葉で登場人物たちが想いを吐露していく。
切ないシーンも続きますが、ドンヨリと暗くなりすぎない絶妙な暖かみもある。

北代ちゃんをどうして応援していたかを自分なりに分析してみると浅はかなもんで

・長年の片思いが報われてほしい
・主人公とフラットに付き合ってきたので未来がイメージしやすくて安心
・女房感

というね、ある種同情のような、というか「報われてほしい!!!!」ってのが八割ですよ。でも確かにこれ見直してみると、恋愛対象というより・・・保護対象的な・・・。

6巻で暴走告白しちゃったときは、普通の漫画だったら負けフラグかなと思いましたけれども作者の秋★枝さんは結構以外な展開も放り込んでくる人なので、もしかしたら、と。
結果はまぁご覧の通りでしたが、フラれ方がお見事。負けの美学というほどカッコよくはない。けれど二人の歩んできた時間の、その重さを、その価値を、お互いがどれだけ大切に思っているかがしっかりと伝わる。酒で飲み下した苦い感情。

本当に、美しい恋をしてきたんだ。
震える子犬をそっと毛布で包んであげるような。
恋愛とも母性とも依存とも取れるような、穏やかで清らかで、閉じた恋を。

けれど西条は恋とは受け取らず、そこが自分の居場所であると、家族からの無償の愛のように受け取ってしまった。
男女の関係とは程遠い、清潔でオリジナルな関係だった。それはとても得難く、作中でも言われていたように「特別すぎた」。虚しくもなるわ。でも西条はクズい一面もあるがこと結論を出す場面に置いては紳士的だし、本当にその女性との関係ついて思考に思考を重ねたような、熟慮の後が見える台詞回しも好感度が高い。そして北代ちゃんが西条の言葉に、彼女がこれまで過ごした時間が報われたかのような、切ないカタルシスを覚えたのが印象的でしたね。

「ずっと一緒に居たのにそれをフッちゃえる人なんだ」という不満を言う宿木に対して、一緒にいる、ただそれだけしかしなかったと振り返る北城ちゃんの
ちょっと困ったようないつもどおりの下がり眉の表情が、グッと来ますよ。

彼と彼女の関係は絶対に間違ってはいなかったし掛け替えのないものだけど
けれどずっと二人で生きていくには、最初から近すぎたのかもしれない。

北代ちゃんが好きなだけで別に他のキャラが憎いんではなく
東雲嬢も宿木さんも、この全42話の連載の中でどんどん輝きを増していって大好きでした。ギリギリのバランスで成り立っていた3人の関係が、「恋ってなんだろう?」ってこっ恥ずかしいことをそれぞれを観点と感覚と温度で語りだすのが心地よかった。
お酒で大失敗する7巻の東雲さんなんかは、こういっては本人に可愛そうだけれど、あれがあったからこそ「美しい恋をすることができない自分」を自分のキャパ以上に認めざるを得なくなって、人としての魅力も上がったように思う。カッコわるい自分にクヨクヨ悩んじゃうなんてこと、マイペースに生きてきた彼女にはなかなかない体験だったろうから。そして作中で言われていたとおり恋愛なんてひとりでやるもんじゃなく、ペースを乱されて当たり前なのだから、そういう意味で東雲さんはひとりの女性としての変化が著しく魅力的で、ただしく正ヒロインだったのだな。

改めて最終巻を表紙を見て、思わず泣けてしまう。
作者の祈りのような、みんなのやさしさが手向けられているような。3人が揃って仲良く、そして光を放つ。
もちろんそれはすでに失われてしまった光景かもしれない。けれど
砕け散ったラストのその先にある未来だとしたら、あまりにも暖かいワンシーンだ。
光はだれに灯るのだろう。どこへ行くのだろう。恋とはどんなものだろう。
その光を見ることは出来ても、その思いの行方までは誰にもわかるはずがない。

 

本能でする恋と、学習でする恋。
このふたつの違いをじっくり腰据えて語るという切り口の面白さもあるし、尺も全7巻。ドラマにするとかに丁度いい尺なのでは??

完結巻をよむのにだいぶ経ってしましたが、間違いなくオススメできる作品。
「煩悩寺」もそうだけれど、日常の中でゆっくりと時が経ちそこで感情が高まっていく静かな盛り上がりを形作るのが本当にうまい。そして大変にツボなのです。

草壁さん

http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_MF01200215010000_68/

もう新連載も始まってましてこれもまーーーーー最高な気配がしますよ。
たいへんえっちです。おっぱい。オススメですね。